しかし1998年に状況が大きく変化しました。トーマス・ネルソンがジョン・C・マクスウェル氏の「統率者の哲学-リーダーシップ21の法則」を出版する決断に至ったのです。当時私は弊社のマーケティング部副部長をしておりましたので、私の仕事はその本の売上をどのように高めていくかにありました。
著者のジョン氏は偉大な著書を書き上げただけではなく、自書の宣伝活動も粘り強く行われました。その結果、彼の書籍はニューヨークタイムズのリストにも掲載され、現在の売上部数は200万部にも及んでいます。現在でもアマゾントップ1000書籍の中に彼の書籍が入っています。
それまで「リーダーシップ」というトピックにはあまり市場が関心を向けなかったのですが、彼の書籍が売れてから、「リーダーシップ」に関するすべての産業が成長していくようになりました。書籍、雑誌、ブログ、カンファレンスなどで盛んに「リーダーシップ」の話題が取り上げられる他、大学院の専攻にも「リーダーシップ」が現れるようにもなりました。「リーダーシップ」に関する市場は急速に広がりました。なぜそのようなことが可能になったのでしょうか?なぜなら多くの大衆が彼の著書を読み、また彼自身が「指導者」であると認識することができたからです。
このことから、もしあなたが偉大な指導者となりたければ、まずはあなた自身が偉大な従者となる必要があると言うことができます。この問題についてはほとんど議論されたことはないのですが、しかし現実として歴史上の偉大な指導者たちがまず始めたことは、「偉大な従者」となるところからだったと思います。
聖書を読んでみましても、
*ヨシュアは約束の地にイスラエルの子孫を導く前にモーセに40年間以上の間従った。
*エリシャは多くの奇跡を起こす業を発揮する前にエリヤに10年間従った。
*ペテロ使徒はイエスに3年間従い、その間に多くの問題を起こしつつも、彼と他のイエスの弟子たちはその後天地をひっくり返すような教えを宣べ伝えた(使徒の働き17章6節には「世界中を騒がせて来た者たち」と書かれている)。
次のことについて具体例を詳述する時間はありませんが、歴史上の最悪の指導者たちは、「従う」ことを決して学ぼうとしなかったように思えます。その結果、彼らは独裁者となり、彼らに従う者たちにみじめな思いを経験させるに至りました。
それでは「偉大な従者」とはどのようであるべきでしょうか?私は「偉大な従者」となるには、少なくとも以下の5つの人間性を備えている必要があると考えています。
1.立場を明確にわきまえていること。 彼らは自分の役割を理解している必要があります。自分の指導者が誰なのか、はっきりと認識できていないかぎり、良き従者とはなれません。あなた自身の範疇の中では良き指導者であるかもしれませんが、すべての人には何かしらの「ボス」のような存在を抱えています。偉大な従者はただその現実をしぶしぶ受け入れるのではなく、容認できる必要があります。
2.従順であること。「従順」とは政治的には誤った概念かもしれませんが、組織が効率的に機能するには必要不可欠なことです。従うことのできない命令はいかなる人も発することはできません。このことが偉大な指導者が従者たちに受け入れられる行動基準を示すモデルとなっています。
3.尽くす者でなくてはいけない。これは大切なことです。偉大な従者は「観察者」でもあります。彼らは指導者がその目標を到達するために何が必要かを観察しています。そしてそのための仕事を不平を言うことなく喜んで行っています。
4.謙虚であること。偉大な従者は自身を誇ることなく、謙虚に振る舞います。彼らは指導者に光を照らすように努めます。彼らの指導者が良く見えるように最善を尽くします。
5.忠実であること。このことについては以前述べましたが、偉大な従者は人前で指導者の悪口を決して言いません。これは指導者に反対したり、批判したりしてはいけないと言うことを意味しているわけではありません。ただそのようなことを第3者の前では行わないということです。偉大な従者は公の場における指導者への忠誠の大切さを理解しています。
偉大な指導者になる秘訣についてほんのさわりのことしか述べることができませんでしたが、もしあなたが偉大な指導者となりたければ、「どのようにすればより良い従者となれるだろうか?」「どのようにすれば自分の指導者をさらに成功させることができるだろうか?」をまず第一に考えてみてください。
(本コラムは米クリスチャンポストから翻訳しています)
トーマス・ネルソンCEO マイケル・ハイアット氏
トーマス・ネルソンは世界最大のキリスト教書籍出版会社である。米国内では書籍出版貿易で第7位となっている。同氏のブログ(http://michaelhyatt.com)では、指導者として必要な福音的思考法やウェブサイトによる効果的なビジネス法、出版業界に関するトレンドなどを紹介している。