同委は、10月のユネスコ総会で、人間の細胞を使った研究や医療を行う際の基本原則を示した「生命倫理と人権に関する世界宣言」が採択されたことを受けて開催された。今回は、この宣言を実行に移す現実的手段の模索を議論した。
ベトナム国立大学のルーン・レ・ディン教授は、貧困国と富裕国との格差の広がりなどが宣言の実現を遅らせると説明した。ディン氏はベトナムを例に挙げ、戦後の経済発展を社会の最優先事項とする同国にとって生命や倫理の課題は後回しになりがちであると指摘した。
また上智大教授(法学)で同大IBC事務局委員長の町野朔氏が講演した。生命倫理に関するキリスト教徒の主張を超教派的に確立して明文化し、国際社会におけるキリスト教世論の形成に取り組むべきだと語った。
カトリック教徒でもある町田氏は、人工中絶に強く反対している。同氏は講演の中で、日本ではキリスト教徒が社会世論の影響を受けて、キリスト教の価値観を第一に主張できなくなっているのでは、と懸念した。その上で、キリスト教徒にはもっと生命倫理に関心を持ってもらいたいと話した。
現在、キリスト教の立場で生命倫理の研究、教育、意見発表などを行う超教派の機関は日本に存在しない。聖書を基に生命を説く意識向上が今後必要とされそうだ。