カーン氏は「女性の3分の1が生涯の内に(性別が原因で)精神的、身体的、性的いずれかの暴力を受ける」という国連の調査結果を報告した。同氏は、女性への暴力が犯罪にならない国が多いとした上で、この問題が多くの発展途上国に根強く残っていると指摘、アフガニスタンやスーダンを例として挙げた。
女性への肉体的・精神的暴力の原因についてカーン氏は、「国や地域の伝統や習慣にある」と説明した。その上で、「暴力を無くしていくためには、法律的なことよりも、一人ひとりの意識を変えていくことが重要」と語った。
また、問題を明るみに出すことが問題解決につながると述べ、「黙っていることは共犯と同じ」として活動への自発的な参加を呼びかけた。
同氏は訪日前、読売新聞の取材に対し、「日本が国連安全保障理事会の常任理事国となれば、世界の人権状況の改善に影響力を増し、より重要な役割を果たせる」と述べ、日本が常任理事国として果たす役割に強い期待を表明していた。今回、質疑応答時に戦時中の慰安婦問題について問われ、「日本政府が慰安婦問題の実態を重く受け止め、これから被害者への道徳的保障をしていくことは日本の人権問題に対する発言に大きな影響がある」と語った。
◇アイリーン・カーン
バングラディッシュ国籍。米国ハーバード大学ロースクール、英国マンチェスター大卒業。1997年、英国を拠点とする開発NGO「コンサーン・ユニバーサル」の創設に関わる。国連難民高等弁務官事務所で21年間勤務。国際保護部副部長、インド派遣団長、アジア上級法律顧問などを歴任。2001年にアムネスティ・インターナショナル事務総長に就任。世界最大の人権擁護団体を指揮する人物として初の女性であり、初のアジア系。イスラム教徒。