イラク人キリスト教徒による連帯組織「カルド・アッシリアン」は14日、「我々の声を聞け、我々の票を数えよ」と抗議運動を行った。ベルギー・ブリュッセルで。(写真、AP通信)
イラク移行国民議会選挙(1月30日投票)の開票結果が13日に発表され、多数派のイスラム教シーア派勢力が第一党となった。シーア派の宗教勢力を主体とした「統一イラク同盟」が単独過半数を占める見通しになったため。投票率は事前予想を超えて高いと報じられているが、イラクのキリスト教政党やキリスト教団体、少数派勢力は、選挙の有効性を疑問視し選挙管理委に抗議している。また、米国や周辺諸国は、イラクが政教一体のイスラム国家になりかねないとの懸念も示している。AP通信が15日伝えた。
キリスト教徒が多く住む地域で投票後に投票箱が盗まれたり、不正投票や投票の妨害の報告があったりしたためだ。選挙委によると、テロは襲撃による治安の悪化や投票箱の盗難等が原因で、北部モスルで有権者の1万5188人が投票できなかった。一部の地域では治安上の懸念から投票所を開設できなかったり、投票用紙が不足したりする事態が起きた。同委によると、開票結果の発表前にもかかわらず359の抗議が寄せられ、Eメールによる抗議も数百通届いていたという。
イラク暫定政府のアラウィ首相は15日、ロイター通信に対し、次期移行政府はより「イスラム的」な政府になると予測、「それが50%のイラク人の選択であり、尊重しなければならない」と意見を述べた。
選挙の実施自体については、国連や米英のほか、イラク戦争に反対した独仏も「成功」と評価した。テロリストたちの死の脅しに屈しなかったイラク国民の勝利を意味すると同時に、民主国家建設へ向けた歴史的な第一歩になり得ると評価されている。イラクの民主化が周辺の中東アラブ諸国に与える影響も大きいはずだ。