反政府勢力の暴動が激化し、国中で治安が悪化しているハイチでは、国境なき医師団(MSF)は、03年12月以降。連日発生する大規模デモやその他の武力衝突で負傷した人々に確実に治療を行き渡らせることを目的として、緊急医療プログラムを行っている。ハイチは今年独立200周年を迎えた。
MSFは、首都ポルトープランス市内およびサンマルク市内の病院で、外科治療プログラムを実施している。2月13日には、16トンの医療物資がポルトープランスに向けてベルギーを出発した。物資には、300人の負傷者を治療できる外科治療キット、5つの応急処置キット、100回分の麻酔キット、120人分の火傷治療包帯キット、150人分の一般用包帯キット、そして災害用緊急医療キット1万人分が含まれている。
MSFは特に、経済的・政治的な制約によって治療を受けられない負傷者が出ている状況を懸念している。負傷者の多くは貧しく、治療費がないために、よくても応急処置を受ける程度で、ほとんどの場合は病院の入り口で門前払いをされる。また、国中の医療施設が政治的に色分けされ、政府側か反政府側のどちらか一方と見なされるため、医療に中立性や安全性が確保されていない。MSFは、この医療機関の政治的色分けによって、異なる派閥の負傷者が治療を受けようとするる際、どのような影響がでているかについて調査を続けており、その結果に応じて今後の活動方針を決めていく。
ハイチでのMSF活動責任者、フィリップ・アメルは次のように述べている。「私たちが目指しているのは、政治的背景や経済状態に関わらず、すべての負傷者が自由に治療を受けられるようにすることです。その実現のため、異なる病院に医薬品や医療器具を平等に支給し、医療スタッフの追加派遣を必要に応じて行っています。チームは、外科治療に集中した活動を行っています。私たちは24時間態勢で負傷者の治療にあたれるよう、医療スタッフのローテーションを組んでいます。」
ハイチ北部はますます孤立を深めており、この地方のプチ・リビエールで活動していたMSFのチームは、現在首都に避難している。安全上の理由から、このチームが現地へ戻る目途はまだ立っていない。現在、ハイチでは、12名の派遣ボランティアと84名の現地スタッフが活動を行っている。さらに2名のスタッフ(外科医と看護師)が補強メンバーとして加わる予定である。
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