先週水曜日にグーグル社が中国向けに検閲機能付き検索エンジンを立ち上げたことで情報アクセスに関する自由について大きな議論を醸すことになった。このことに関する意見を求めるために米国議会はグーグル社とグーグル社の競合社であるヤフー社を議会公聴会に招集した。
この中国向け新Google検索エンジンでは、人権、民主主義、宗教的迫害、ダライ・ラマ、台湾独立運動、天安門『虐殺』事件のようなキーワードを検閲するようにプログラムされている。例えば法輪功精神運動のような言葉を検索すれば、その代替となる中国政府ホームページに掲載されている法輪功を非難する記事が検索されるようになるという(AP通信)。
他にも中国政府にとって不都合な内容を含む言葉を検索すれば同じような代替サイトが検出される。多くの場合、検索で引っかかるサイトは中国政府公式サイトかホームページアドレス末尾に「.cn」のついたサイトに限られることになる。
このグーグル社が中国の検閲政策に加担したことは大きな議論を招くことになり、一部団体はグーグル社の決断に関し激しく抗議している。
1月26日、宗教及び公共政策機関会長のヨセフ・K・グリエボスキ氏は、グーグル会長兼CEOのエリック・シュミト博士に対し、書簡を送り、「今回のグーグルによる中国政府に黙従するような決断は、グーグルの発足当初の世界中に情報の自由を与えるという考えに矛盾している。検閲機能付きのグーグルサイトでは中国少数派を弾圧し、削除され、偏見に満ちた中国国内の情報によってプロパガンダを広めるだけで、反政府信仰団体はますます情報を国外から盗み出さざるを得ない状況を強化するだけである」と非難したという。
また言論・報道の自由を目的とした非政府ジャーナリスト組織「国境なき記者団」は中国のヤフーとマイクロソフト社のMSN.comに対し中国の検閲政策に応じないように訴え、グーグルの情報をブロックする立場に強い反対の姿勢を表明した。
1月25日付の記事でAP通信のインターネット部局長ジュリアン・ペイン氏は、このように政府に検索エンジンが協力するとき、中国政府はインターネット上での統制がより容易になってしまうと懸念の意を示した。
AP通信によると、『悪に陥らない』ことをモットーとしているグーグル社は検閲機能付き検索エンジンを立ち上げることで中国において検索エンジンがより身近になり、情報提供の場を広めることにつながると述べているという。
中国における人権活動家クリス・スミス氏はこのグーグルの決断を激しく非難した。スミス氏は、先週金曜日発刊されたサンフランシスコ・クロニクル紙上で、「『悪に陥らない』という社是をもっているグーグルが中国検閲政策にただ単に金儲けのためだけに協力し悪の味方をしてしまったことは実に驚きである」と述べた。
グーグル社はAP通信に対し電子メールで「中国人、あるいは中国市場に対する最高のアプローチ法を決定するに至り、我々はユーザーの興味を満足させることと情報へのアクセスを拡大させること、また地域状況に適応することのバランスを取らなければなりません。検索結果を削除するということは当社の使命に一致しないことではありますが、何も情報を提供しない、つまりユーザーに何のサービスも提供しない方がより当社の使命にそむくことになるのです。」と返答したという。
グーグル社の金曜日のブログでは、「時間が経過するにつれて世界中の全ての人々が情報に完全にアクセスできるようになっていくだろう」と書かれていたという。
米国議会ではグーグル社とヤフー社を招待し、中国政府が反政府的と見なす政治問題を取り上げたサイトを検閲することについて質問を投げかける予定であるという。これらインターネット会社は米国国会議員の前で言論の自由の一般的見解と中国のインターネット状況についての見解を発表するように要求されているという。グーグル、ヤフーのどちらもどの程度この公聴会に協力するのかは明らかにしていない。
また米政府はこのようなインターネット会社が中国で問題と見なされている情報をブロックすることについてどういう見解をもっているか、あるいは中国政府によって何らかの圧力がかかっているのかを公聴会で質問する予定であるという(サンフランシスコ・クロニクル紙)。
一方で中国では1億人以上ものインターネットユーザーが存在しており、この数は急激に増加することが予想されている。