フセイン元イラク大統領の死刑判決をめぐって世界で意見が分かれる中、バチカンとローマ・カトリック教会の指導者らが5日、「全ての命は神聖である」として死刑判決を非難する談話をメディアに発表したことが7日、わかった。
イラクのイスラム教シーア派住民を虐殺したとして起訴されたサダム・フセイン元大統領に対し、イラク高等法廷で死刑判決が言い渡された。
バチカン「正義と平和協議会」議長を務めるレナート・マルティノ枢機卿は地元記者団に「絞首による死刑執行は憎悪と復しゅう心に満ちた行為だ」と述べ、罪をもって罪を裁くことは殺人であるとした。
マルティノ枢機卿は3年前に米軍がフセイン被告の身柄を拘束した際、米政府に対し「米軍はフセインを(いけにえの)牛のように扱っている」と非難したことがある。
イエズス会司祭、ミケーレ・シモーネ氏はバチカンのラジオ放送番組に出演し、フセイン被告が重大な罪を犯したと認めた上で、死刑は避けるべきとの認識を明かした。同氏は「混迷するイラク情勢がフセイン被告の死刑で改善するとは思えない。私を含む多くのカトリック信徒は原則として死刑に反対だ」と語った。
特にイラクの場合、報復という「死刑執行」によって拉致、殺害が日常化し、罪のない命が犠牲になっている。シモーネ氏は、フセイン被告の死刑を回避すれば、無差別殺人が横行する状況の中、国民は恩赦として受け止めるかもしれないと分析した。
フセイン体制下のイラクでは住民数10万人以上が虐殺された。国民の多くは、元独裁者に対する極刑を望んだが、治安回復にはまだ時間がかかりそうだ。