スイスジュネーヴで開催された「21世紀におけるキリスト教」に関する会議最終日の8日に、ドイツ福音主義教会連盟(EKD)指導者らとACT・アライアンス、欧州教会会議(CEC)、世界ルーテル同盟(LWF)、世界改革教会コミュニオン(WCRC)および世界協会協議会(WCC)各代表者らが活発な議論を交わした。
教会・人道支援・緊急災害支援を行う教会関連機関から構成されたACT・アライアンスのジョン・エンドゥナ氏は、「現在もっとも挑戦となっている課題のひとつに宗教に対する不寛容の問題がある。第2に、世界中で人道支援の活動の場が縮小され、必要としている人々の手に支援を届けるのが難しくなったことが挙げられる」と述べ、キリスト教支援団体が、他の支援団体との提携をとっていくことが、政府との対話を促進し、問題の多い地域の状態の改善を行うに当たって重要であることが指摘された。紛争で多くの難民が生じたスーダンダルフール州においてはローマカトリックの支援ミニストリーであるカリタスと提携することで非常に効率的な支援を行っていくことができたという。同氏は「私たちは異なる信仰の間、およびエキュメニカルな協力関係を構築していくことで他地域でなされた支援の方式を当てはめていくことができる道を模索している」と述べた。
LWFのマルティン・ユンゲ博士は「我々は我々自身の力でエキュメニカルには成りえない」と述べ、キリスト共同体内部の諸教会、教義間の誤解を克服するばかりではなく、それぞれ競合状態にあるエキュメニカル組織同士の正しい相互理解も必要であると促した。そして諸教会が多くの中心をもっていることが弱みではなく強みとされるべきであり、そのことで教義を越えた対話の基盤を形成し、多様な背景を持つ人々が共に顔を合わせ、「知識のエコロジー」を模索できるようになるべきだと述べた。
WCC総幹事のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト博士は諸教会・機関・政府および文化の相互理解を促進させていくことに賛同し、そのような理解の促進のためには「実質のある一致」が必要であると述べた。そのためにあらゆる関係者がキリストにあって協働することができる新たな対話モデルを模索していく必要があるだろうと述べた。
WCRCのセトリ・ニョミ博士はEKD代表団に対し、今回のエキュメニカル会議においてドイツのコンテクストと世界レベルのコンテクストの両面で積極的に関わってくれたことに謝意を表した。ニョミ博士は改革教会が今後直面する課題に対して「諸教会の目に見える形での一致を進めていくこと」と「南半球のみならず、世界中において多くの不正が行われていることを訴えていくこと」に継続して取り組んでいく意を示した。WCRCにとってとりわけ今後の課題となる問題のひとつに、改革派教会内の分裂を取り除くことがあるという。
CECのヴィオレル・イオニータ教授は、「欧州諸教会は、かつてはキリスト教大陸といわれたヨーロッパにおいて、全体的な世俗化の問題に直面している」と現代欧州諸教会の大きな問題について言及した。CECではローマカトリック教会と建設的な対話を進めており、多くの共通の土壌を見出しているという。CECは欧州諸教会を支援し、欧州の政治組織に対し、しばしば敵対的になりがちなイエスキリストの福音の声を提唱する手助けをしてきた。イオニータ教授はEKDについて「ドイツ、欧州および世界の福音活動において重要な役割を果たしてきた」と称賛した。EKDのマーティン・シンダフット博士は「私たち独自のコンテクストにおいて信仰的であるために相互の対話による洞察が必要である。エキュメニカル運動においては複雑な関係やコネクション構築がなされている」と述べ、キリスト共同体が一致して行動するときの核心となるべきものは常に福音にあることを強調した。
今回のエキュメニカルセンターの会議でドイツからEKDが招待されなされた大きなテーマのひとつに2017年のドイツの神学者マルティン・ルターが95の論題を教会の扉に張り出した日から500年を迎える記念日の催事についての計画があった。この催事については参加者全員が熱意をもって取り組んでいくことに同意し、ドイツだけではなく世界的に重要な記念日であり、世界規模のイベントとなることが期待されている。1517年の95の論題と2017年の世界が相互に作用していくような催事の在り方について模索された。本会議終了に際して、EKD会員のタベ・ドルカー氏が、今回の会議への招待に謝意を示し、マルティン・ルターの彫像をエキュメニカルセンターに寄贈した。