米国務省は17日、世界各国の信教の自由に関する年次報告を発表した。信教の自由に関して「特に懸念のある国」には、前年と同様に北朝鮮や中国、イランなど8カ国を指定した。同日記者会見を開いたヒラリー・クリントン国務長官は、中国でチベット仏教徒や政府非公認のキリスト教会に対する弾圧があると指摘する一方、ウイグル族のイスラム教徒へも弾圧があると言及した。
同省は報告書で、中国は「通常の宗教活動」を憲法で認めているが、「通常」の範囲を政府が自由に解釈できる状況にあると指摘。同国内の宗教活動が、政府認可の愛国的な宗教団体だけに制限されていると批判した。
中国では、仏教、道教、イスラム教、カトリック、プロテスタントの5つの宗教・宗派が法的に認められているが、それぞれの信仰と同等の権威を中国政府に認めなければならない。そのため、中国のプロテスタント教会では、公認教会と非公認の家の教会があり、家の教会は弾圧の対象となっている。
中国のイスラム教に対する弾圧については、昨年7月に新疆ウイグル自治区で発生した暴動後、いくつかのモスクが一時閉鎖されたことを報告。海外へ行かないようウイグル族のイスラム教徒のパスポートが没収されたことなどを批判した。
同報告は、米国務省の国際宗教自由委員会(USCIRF)が毎年秋に発表するもので、宗教の自由が著しく損なわれている国は「特に懸念される国」に指定される。指定された場合、経済制裁などを科す際の根拠とされることがある。
しかし、ここ数年は、北朝鮮、中国、ミャンマー、エリトリア、イラン、サウジアラビア、スーダン、ウズベキスタンの8カ国のみの指定が続き、キリスト教迫害監視団体のオープン・ドアーズは今年の報告について、特に新しい情報はないと問題視した。
米オープン・ドアーズのアドボカシー担当者であるリンジー・ベッシー氏は、ミッション・ネットワーク・ニュース(MNN)の取材に対し、多くの人々が「特に懸念される国」に指定されるべきと考えていたアフガニスタンやパキスタンが指定されなかったことを指摘した。
パキスタンでは今月初め、イスラム教を冒涜したとしてアシア・ビビさん(37)に死刑判決が下された。ビビさんは、同僚からイスラム教への改宗を迫られたが、クリスチャンであるとして改宗を拒否。同僚との口論の中でビビさんの発言にイスラム教を冒涜するものがあったとして、「冒とく法」違反が適応された。冒とく法は、1986年に独裁者ジアウル・ハク大統領が制定して以来、他宗教の信者に対する迫害や暴力を合法的に行う根拠となっている。
ベッシー氏は、「パキスタンでは冒とく法の明らかな乱用がある」と批判。米国務省に対しては、「現在とは異なる制裁措置を課すなど他の行動を行って、信教の自由を改善するための同意作りに各国と協力することができるはず」と指摘した。