迫害や差別に遭遇するキリスト教会を支援する国際組織「バルナバ財団」が、世俗化、無宗教化が進むヨーロッパのキリスト教会も「迫害」に備えるべきだと警鐘を鳴らしている。
バルナバ財団では11月のいずれかの日曜日を「苦難にある教会のための日曜日」として定め、迫害で苦しむクリスチャンのために祈るよう呼び掛けているが、英国などヨーロッパの教会は、世界各国で起こっている迫害の問題だけではなく、自国のためにも祈るよう勧めている。
英国では近年、キリスト教信仰に基づいた信仰的実践行為が、機会均等などの法的理由で制限されるケースが増えている。数年前には、英国のあるクリスチャン夫婦が里親となるための申請をしたところ、里子に同性愛が受け入れられるべきものだとは教えられないと、自身の信仰に沿って拒否したことを理由に、申請を断られるという事件があった。
また、今年10月からは、同性愛者の雇用などの機会均等に関する新たな法律が施行されたため、教会が職員などの雇用にあたって、その教義のために同性愛者の雇用を拒否した場合、法的な罰則を受けなければいけない事態となっている。同法律に関しては、ローマ教皇ベネディクト16世も英国が機会均等の保障を目指す意欲国だと評価する一方、その目的のために宗教の自由を不当に制限してしまっていると非難している。
同財団は「非西欧世界の至る所でクリスチャンの兄弟姉妹が耐え抜いているひどい暴力や不正を、ちょうどこの前の日曜日にイラクで教会が襲撃されたような事件を、我々は迫害だと考えやすい。しかし、隠れた恐怖が西欧社会に忍び込みつつある。我々はそれに備えなければならないのだ」と述べ、自らの信仰を選択する自由という全き宗教の自由が攻撃されていると指摘する。
英国内のキリスト教信仰へ対する圧力については、同国内の教会指導者らも強く懸念をいただいている。英国国教会(聖公会)のチチェスター主教、ジョン・ハインド氏は、ここ最近の動向について「英国でこれまでにないほどにキリスト教に対する敵意を感じる」と指摘。英国福音同盟のスティーブ・クリフォード代表も今年9月、ベネディクト16世が公式訪英した際、教皇の訪英がキリスト教信仰への制限が強まる同国にとって有益だとする見解を示すなどしている。