【南アフリカ・ケープタウン】米ニューヨーク・マンハッタンのメガ・チャーチ、リディーマー長老教会創設者で牧師のティム・ケラー氏は20日夜、ケープタウン2010=第3回ローザンヌ世界宣教会議=の全体集会で講演し、福音主義教会の指導者に対して都市部伝道の必要性を訴えた。
ケラー氏は昨年米政府が発表したレポートを引用し、21世紀の国際社会は国家単位ではなく、巨大都市の影響下に置かれていると語った。約300年前に世界人口の3%を占めていた都市部の人口は現在50%を超え、人口過密が2カ月に800万人のペースで進行しているという。
ケラー氏は、教会の都市部進出が人口の流入に追いついていないと述べ、「教会が人の集まるところを探しているなら、間違いなく都市部に進出するべきだ」と強調した。
ケラー氏は都市部伝道の意義を4つ挙げた。第1に、都市部には次世代を担う青年が集まる。第2に、故郷よりも都市部にいるときのほうが福音に耳を傾ける準備ができている。第3に、社会に影響を与える文化人や実業家が集中している。第4に、都市人口の3分の1は貧困層であり、貧しい人々に福音を届けやすい。
都市部の伝道を効果的にする方法として、ケラー氏は神のメッセージを各文化の形態に委ねる「文脈化」を強調した。その例として、中国の巨大都市は中国全体と異なり、米国の巨大都市が米国全体と異なるように、都市部の教会は地方の教会と異なると話した。都市部の教会に集まる人々は文化的に多様なため、教会は当地の文化に対する人々の不理解を寛容に受け止めると同時に、人々の多様な文化背景に対する教会の不理解を責められることも覚悟する必要があるという。都市部の教会を担う牧師は、文化的摩擦に関する不満を完全に解消することは不可能であることを知った上で、さまざまな批判を通して学び続ける姿勢が求められる、とケラー氏は語った。
ケラー氏は、都市部の教会は信仰と職業の関係性を十分に示す必要があると述べた。都市部の人は生活の90%が職業や仕事で占められている。「地方での伝道と違い、信仰を仕事や職場で生かす手助けをしなければならない」とケラー氏は語った。
さらにケラー氏は、都市部の教会は分裂や変化を常に念頭に置くべきだと語った。また、福音主義に徹すると同時に社会的正義にも関心を示し、文化・芸術を受け入れ、キリスト教の他教派や他宗教とも良い関係を心がけることが大切だと述べた。
ケラー氏は、旧約聖書のアブラハムが都市を救うためにただ1人の義人を探して危険を冒して都市に向かったことと、十字架にかかって死なれた唯一の義人であるイエス・キリストを通して全世界の罪が許されたことを引き合いに出して、「神はわれわれに都市へと出て行くことを求めている」と語った。