ザクロの原産地については、トルコから北インドのヒマラヤ山地に至る西南アジア説、南ヨーロッパ説、カルタゴなどの北アフリカ説など諸説ある。日本へは中国を通じて10世紀に渡来したと言われている。
ザクロは古代から健康や美容に良いとされ、特に女性の間で珍重されてきた。近年その効果が科学的に解明され、ザクロジュースなどがブームとなっている。効能はコレステロールの軽減、動脈硬化、高血圧、心筋梗塞の予防など。女性ホルモンと同じ性質の成分「エストロゲン」が豊富に含まれているため、美容のほか、更年期障害、骨粗鬆症、アルツハイマー、抜け毛・白髪の予防にまで効果を発揮するとされる。
女性と言えば、ザクロは旧約聖書の雅歌で「ベールの陰のこめかみはざくろの花」(4:3、6:7)と、美しい女性を形容する言葉として出てくる。また、多くの男性の中にいるただ一人の女性を表す「紅一点」は、11世紀の中国の詩人・王安石の詩句「万緑叢中紅一点(一面緑の草むらの中に紅い一輪のザクロの花)」に由来すると言われ、ここにもザクロが登場する。
ザクロは果実が多くの粒を持つことから、豊穣と生命の象徴とされている。ソロモンの神殿にはザクロの意匠が凝らされ、大祭司の衣服にもザクロの飾りが付けられた。古代から愛され、今再び注目されているザクロ。神様の恵みの豊かさを感じつつ、感謝して味わいたい。