北米最大のプロテスタント教派、南部バプテスト連盟は受洗者数と信徒数の減少対策として、世界宣教や国内開拓など教団主体の拡張計画に資金を分配できる共同資金プログラムの活性化を決定した。臨時の使途特定献金などが、連盟本部の拡張戦略を不安定にする恐れがあると判断して「臨時献金の納付額に応じて共同資金プログラムの各教会負担分を減額する」という従来の方針を転換し、共同資金への上乗せとして計上する。州別に管理している既存教会の伝道資金確保が先決との反発にも、「同じことを同じようにやっていて、異なる結果が得られるのか」(ジェームス・メリット元連盟理事長)とイエス・キリストの大宣教命令に原点回帰することを決定した。
6月15日の年次連盟総会で発表された報告によると、同派の信徒数は3年連続で減少した。教会数は半世紀で1万7000増加したが、受洗者数は半減した。信徒の高齢化が進み、若い世代の負担増で教会の財政が弱体化。報告書では、臨時献金を連盟に納める場合、各教会が定期的に納めている共同資金の負担額を減額する案も含まれていた。
2050年までに信徒数半減 「現状維持は何も生み出さない」
同派の信徒数は現在約1600万人。2006年まで増加を続けたが、翌年は減少に転じ、08年にはさらに0.2%減少した。減少率は毎年0・06%ずつ高くなるとみられ、このペースでは2050年までに870万人を割り込む計算になる。
負担金の減額案に対し、モーリス・チャップマン連盟理事長ら反対派は「献金が使途特定献金に偏り、共同資金を縮小させるだけだ」と指摘した。
報告書は最終的に減額案を含む一部に修正が加えられ、7つの提言として次の通り採択された。▽連盟の使命はキリストの福音を全世界に伝え、弟子とすることであるとの再表明▽健全でキリストを中心とした信頼と融和の文化▽共同資金プログラム等への一層献身的な貢献▽北米宣教委員会の最優先事項は教会開拓と魂の救済であることの再確認▽海外宣教委員会が北米を含む全世界の未開拓地に進出する上で妨げとなる地域的制限を取り払うこと▽共同資金プログラムの活性化を目的とする連盟理事会と各州理事会の協力▽共同資金プログラム全体に占める海外宣教委員会の使用割合を現在の50%から51%に増額すること。
連盟傘下の研究機関、ライフウェイリサーチのエド・ステザー代表は米紙クリスチャンポストの取材に対し、「われわれは信徒の高齢化と減少という重篤な状態を直視し、連盟の2、30年後を見据えた伝道と開拓に全力を尽くす。今回の議論はその決意の表れだ」と話した。
連盟総裁の要請で報告書を作成した「大宣教命令に回帰するための特別委員会」は北米と世界の宣教統計についても調査結果を発表した。この報告によると、世界人口約68億のうちキリスト教徒以外の人口は60億で、そのうち35億人は聖書に触れたことがない。北米人口約3億1500万のうち、キリスト教徒以外の人口は2億5800万に上る。