【CJC=東京】ドイツで長年の慣行となっている教会税が廃止の方向に進む可能性が出てきた。きっかけは、教会法の専門家が納税忌避のため「教会という公的組織」を離脱するが、「信者の交わりとしての教会」に留まる、と主張したこと。カトリック教会、ルーテル教会、復古カトリック教会信徒だと登録したドイツ市民は、所得税の8〜9%を源泉徴収され、これが各教会に交付される。教会税が廃止されれば、ドイツの教会が財政的に窮地に追い込まれることは必至だ。
バーデン・ヴュルテンベルク州フライブルクの行政裁判所はこの7月、カトリック教会に留まるものの、もう教会税は納入しないと主張したハルトムート・ザップ氏の訴えに有利に判示した。
2004年までフライブルク大学で教会法を講じていたツァップ氏は、カトリック者が、税金を支払いたくないため教会を去ったものの、受洗は有効だから、秘跡を受け続けられると主張した。
現制度の下で、納税中止を望むカトリック者は、「教会という公的組織からの離脱」を希望すると記した書類に署名する必要があるが、それは結果として破門されることになる。
ツァップ氏は、書類に署名したものの、「信者の交わりとしての教会」に留まることを望むとの宣言を書き込むことを主張した。フライブルク大司教区は、同氏が書き入れた宣言は無効だ、と訴えた。同氏に有利な判示が出されたが、大司教区側は再審を要請する構え。
有力紙『南ドイツ新聞』はこのほど「教会税への弔鐘」という特集を掲載した。現行の教会税方式は長続きしそうにない、として「世俗国家がそのように重要な霊的な結果をもたらすことで協働するのか」と疑問を投げ掛けている。
ドイツ司教団は、「教会という公的組織」と「信者の交わりとしての教会」を区別することは不可能で、現行税制を逃れる署名は破門を意味する、と主張している。
ツァップ氏は、税制の有効性を問題にするよりも、バチカン(ローマ教皇庁)に教会税制度を改革し、教会員の条件にしないことを望んでいる。
教皇庁が06年に出した文書は、教会を離脱したいとの要求は責任ある権威(すなわち教会)によって受け入れられなければならず、国家にはそのような要求を承諾する能力がないとしている。
ドイツ・カトリック教会は2008年には56億ユーロ(約7530億円)の教会税収入があり、世界でも財政的に余裕のある教会の一つ。司祭始め数千人の従業員の給料が支払われ、カリタスなどの奉仕団体を援助している。