【CJC=東京】ベトナム警察が6月7日、ハノイ南方フンイェン省コアイチャウ県のオンディン村にあるアガペ・バプテスト教会を襲撃、礼拝を守っていた人たちを殴打、ドゥオン・バン・テュアン牧師と長老1人を拘束した。2人は同日夕釈放されたが、拘束中に当局者から殴打された。ただ痕が残らないよう、腹部を狙い打ちしたと言う。
テュアン牧師が警察の退去命令を無視して現地に留まったことへの報復、と教会側は見ている、と米福音派系のコンパス通信が報じた。これまでにも4月19日、5月24、31日に警察が礼拝を妨害している。
警察当局は「すぐにも寄り道せずに村を離れる」ように命令し、釈放した。
テュアン牧師はこの3月、村に来た際、教会の長老に、首相が2005年に出したプロテスタンティズムに関する特別指示に基づき、登録することを勧めていた。この指示通りに登録すれば宗教活動が認められる。教会の長老は申請書を出したものの、30日の期限後に登録を拒否、書類を返却した。理由として、中央の宗教事務局などの許可が必要、首相の指示は山岳部の教会を対象にしたもので、平地の教会には適用されない、と言う。山岳民族にはキリスト教信仰が普及していることから、当局側は宗教に名を借りた独立運動を行う過激派組織と主張して硬軟さまざまな対策を打ち出している。
世界各国の、宗教の自由の現状を調査していた米連邦委員会は5月1日、年次報告書を発表、侵害の度合いが深刻な国としてベトナムなど13カ国を列挙、米政府に対し、これらの国を宗教の自由で特段の懸念がある国に指定するよう促した。ベトナム外務省などが対応策を練っている最中の今回の事件は、当局側の混乱を反映したもの、と見られ、現地では「皇帝の法も村落の慣習には負ける」という格言がささやかれている。
ベトナムでは総人口の1割強がキリスト者。カトリック者が総人口の約10%を占め、プロテスタント信者は総人口の1%弱。