19世紀末に配布され、教会内外に大きな影響を与えてきたローマ教皇レオ13世の回勅『レールム・ノヴァルム』以降、カトリック教会が社会の諸問題に対して発してきた「社会教説」を初めて公式に体系化した書籍『教会の社会教説概要』(教皇庁正義と平和評議会)が6月末に、カトリック中央協議会から発売される。
案内によれば、同著は「社会教説の完結した概説であるとともに、教会と社会の近代の歩みを踏まえて現代を総合的に分析し、諸問題がより複雑化・世界規模化する21世紀にあって、教会は社会に対してどのような姿勢をとり、どう行動し、いかなるメッセージを発していくべきなのか」を明らかにしている。
序文「連帯的な全人的ヒューマニズム」から始まり、▽人間に対する神の愛の計画、▽社会教説と教会の使命、▽人間と人権、▽教会の社会教説の諸原理、▽家庭―社会の生きた細胞、▽人間の労働、▽経済生活、▽政治共同体、▽国際共同体、▽環境保護、▽平和の促進、▽社会教説と教会の活動の12章構成。最後は、結論「愛の文明に向って」で結ばれている。
540ページのA5上製で税込定価3150円。同協議会出版部(電話:03・5632・4429、FAX:03・5632・4456)では現在予約を受け付けている。
一方、同著発売を記念して、7月4日には上智大学で「カトリックの社会教説と人間性の探究」をテーマに、10月3日には南山学園で「政治共同体、国際共同体と社会教説」をテーマに、11月3日には聖トマス大学で「人間共生の在り方と社会教説」をテーマにしたシンポジウムが開催される。上智大学のシンポジウムでは、日本カトリック神学院の牧山強美院長と、同著日本語訳者のマイケル・シーゲル氏(南山大学社会倫理研究所所員)が講演する。詳細は、同協議会のホームページで。
【社会教説とは?】 人間に関する問題はカトリック教会にとって重要な関心事であり、社会問題もその例外ではない。聖書と自然法によって示された原理を、社会、文化、政治、および経済に適応することは、カトリック教会の使命の不可欠な一部である。それゆえ、教会は社会問題に関して、その時代の必要に応じて発言してきた。これが、教会の社会教説である。(カトリック中央協議会出版部)