金融不安などで経済的困難に直面していた日本経済の立て直しを図り、世界でも前例を見なかったゼロ金利政策(99年)や量的緩和政策(01年)を導入した元日本銀行総裁(第28代)の速水優(はやみ・まさる)氏(日本基督教団阿佐ヶ谷教会会員)が16日午前、死去した。84歳。葬儀は近親者のみで行われる。
98年3月、日銀幹部の接待汚職事件で責任をとり辞任した松下康雄総裁の後任として、新日銀法初の日銀総裁に就任。03年3月まで同職を務め、金融不安やデフレなど危機的状況にあった日本経済の中で金融政策の舵取りを担った。
キリスト教徒(プロテスタント)である速水氏は、日銀総裁時代には総裁室の奥にあった小部屋に「キリストは私たちの平和」「恐れるな、わたしはあなたとともにいる」という聖句の掛け軸をかけ、国会答弁などの際は「わたしはあなたとともにいる」という聖書の言葉が大きな支えになったと証している。
速水氏が同職に就任したのは、56年続いてきた日銀法が改定され、ちょうど「中央銀行の独立性と透明性」をうたった新日銀法が施行された時期。中央銀行が「経済の良心」とならなければならないとし、自らの判断が本当に正しいのか、誰に対しても説明ができるのか、神の前に試されていたと語っている。
同職を退任後は、03年には創立100周年を迎えた聖学院(東京都北区)から名誉博士号を授与され、同時に同院名誉理事長、全学教授に就任した。このほか、東京女子大学理事長、国際基督教大学理事、東洋英和女学院常務理事などキリスト教学校で要職を歴任している。05年には、日本キリスト教文化協会から第36回キリスト教功労者顕彰を授与された。
著書に、速水氏選の聖句集『誠実 ビジネス界を翔る人の聖書の言葉』(日本聖書協会)、『強い円 強い経済』(東洋経済新報社)、『中央銀行の独立性と金融政策』(同)など。