現代の日本人の多くが「無宗教」を自認していますので、結婚式は「人前式」、また葬儀においては「無宗教式」が徐々に増えるのは、自然なことだと思います。普段、特別の宗教を意識していないのに、冠婚葬祭だからといって、突然なじみのない宗教を選ぶのに抵抗があるのは当然かもしれません。今後、この傾向は一層進むことでしょう。
結婚式において大切な祝福の「祈り」
日本の結婚式は「キリスト教式」が最も多い状況に変わりはありません。しかし最近では、形式にとらわれず、自由に趣向を凝らせる「人前式」が徐々に増えています。かつてバブルの時代、立派な教会堂(結婚式場)が建てられましたが、利用者が減っているそうです。
ただ増加している「人前式」でも、家族や友人の前で新郎新婦が「結婚の誓い」を宣言する場面が中心になるため、牧師の「祈り」はありませんが、プログラム上は「キリスト教式」と大きな違いがありません。
おそらく「人前式」においても、新郎新婦を祝福したい思いは共通していますので、牧師が参列者の気持ちに寄り添って祝福の「祈り」を導くなら、より質の高い「人前式」の結婚式になると思います。
また、結婚披露宴など、結婚式とは異なるお祝いの場において、宗教色を除いて「祈り」を導くことも、非常に良い効果をもたらすことでしょう。
葬儀の現状と今後の展望
一方、日本の葬儀においては、今でも「仏式」が最も多いのですが、仏教離れが加速し、依頼件数が徐々に減っています。「神道式」や「キリスト教式」はわずかに増えていますが、「無宗教式」の増加が目立っています。
実は、日本の仏教は非常に長い間、葬儀前後の日本人の心を支える大切な役割を担ってきました。ところが、現代社会ではなじみのない「読経」のスタイルから脱却できないことや、僧侶への「お布施」や「戒名」などの費用がかさむことなどから、仏教離れが著しくなっています。
ブレス・ユア・ホームでは発足以来、日本人の心に届く「キリスト教式」の葬儀を普及させ、葬儀前後に寄り添うことも含めて、仏教葬儀文化に代わる新たなキリスト教葬儀文化を育てたいと願ってきました。
今後も地道な働きを継続するつもりですが、そもそも信者が1%程度しかいないことや、教会中心に培われたキリスト教文化が日本人になじんでいないこともあり、大きな成果を見いだせていません。
今後は「キリスト教式」葬儀の品質の高さを知っていただくため、新たな工夫を取り入れるとともに、「キリスト教式」以外の葬儀にも牧師が関わることを通し、遺族に寄り添う機会を増す努力を重ねたいと思います。
特に「無宗教式」の葬儀については、「人前式」の結婚式と同様に、参列者を慰め、励ます牧師の「祈り」を組み込み、日本人の心に届く新しい葬儀を提案していくつもりです。
「無宗教式」の葬儀における「祈り」
多くの葬儀社では、仏式で用いられる「読経」や、キリスト教葬儀における「祈り」がない「人前式」の葬儀は、式としての形が整いにくいと考え、「無宗教式」の葬儀を積極的に展開してこなかったように思います。
しかし「無宗教式」の葬儀依頼は確実に増えていますので、葬儀社によっては、音楽やナレーションを巧みに使い、参列者の「祈り」を導く場面を創り上げようと努力しています。
ただ「祈り」は形ばかりを整えても、大切な人を亡くした悲しみや寂しさを慰め、励ますのは非常に難しく、牧師が遺族に寄り添い、その場にふさわしい「祈り」をささげることが最も良い効果をもたらすと考えています。
今後、葬儀社と連携を重ね、「無宗教式」の葬儀であっても、牧師が積極的に対応できる仕組みを構築したいと願っています。
「善き隣人バンク」の働きとの連携
継続的な傾聴を無償で行う「(一社)善き隣人バンク」は、発足以来4年近くが過ぎ、働きが拡大しています。依頼者からの問い合わせが多いため、常時電話を受けることが難しくなり、今後の課題になっています。
この働きは、日本宣教の働きを土台から支える極めて大きな効果があると考えていますが、エンディングに寄り添うブレス・ユア・ホームの働きとの連携においては、その効果が顕著に現れます。
人の弱さの極限であるエンディングに寄り添って傾聴を重ね、召された際には葬儀に対応し、その後の遺族にも寄り添える宣教の仕組みを構築し、日本の各地に普及させたいと願っています。
もちろん牧師が「仏式」「神道式」「無宗教式」「キリスト教式」などの全ての葬儀に寄り添って、傾聴を重ね、特に「無宗教式」の葬儀においては「キリスト教式」と同じように、配慮を持って司式に対応できるように仕組みを整えたいと思います。
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