内戦の激化に命の危険を感じたアフメドと家族は、シリアを離れる決意をした。彼らはスペインのマドリードにたどり着いた。
シリアを出る前、アフメドは強烈な夢を見た。その夢の中で、神は「アフメド、私はあなたのことをもっと知りたいと願っている」と告げたというのだ。その夢は、アフメドの心に深く残った。しかし彼は完全には理解できず、そのことを思い巡らせていたのだ。
EUおよびスペイン当局は、アフメド一家をスペイン南西部のカディス県に送った。そこではあるキリスト教団体が、難民たちが社会に適応できるように支援をしていた。この団体は難民たちを難民キャンプではなく、アパートに住まわせることを提案し、政府がその費用の一部を補助するようになった。
アフメドは、全く知らない人々のためにこれほどの時間と労力を費やすキリスト教徒たちに驚きを隠さなかった。ある日、彼は団体のディレクターであるパブロにこう尋ねた。「なぜ、こんなにも私たちを助けてくれるのですか?」
パブロは答えた。「私たちは神を信じています。神は人々を愛しておられ、私たちがこのような人々を助けることは、他でもない神ご自身が望んでおられることなのです。イエス・キリストは私たちのために死んでくださいました。イエスは、彼を信じる私たちにも、困窮している状況にある人々のために犠牲を払うよう求めておられるのです」
この返答を聞いてアフメドは大いに関心を持ち、キリスト教の神についてもっと知りたいと思い、これについてパブロに尋ねた。その後、彼らは何度も会話を重ね、やがてアフメドは日曜日の礼拝や他の活動に参加し始めたのだ。そして彼は、オンラインで聖書を読むようになったのである。
ある日、アフメドはパブロにこう言った。「読んだこと全てを信じています。ただし、神が子を持つということだけが問題です」。多くのイスラム教徒と同様に、彼は神が子を持つという考えに抵抗を感じていた。しかし、それにもかかわらず、彼は自分自身で自分を救うことは決してできないことを認め、イエス・キリストに信仰を置く必要があると告白したのである。その時、神はシリアでの夢を彼に思い出させ、彼は自分の人生をキリストにささげる決意をしたのであった。
「シリアの内戦が泥沼化して、多くの難民が発生していた数年前、欧州の他の国々が難民を拒む中、何千ものイスラム教徒の難民がスペインに流れ込んでいました。そして毎月多くの人々がキリストを信じるようになっていたのです」とミニストリーのスタッフは言う。
元イスラム教徒の人々には、多くの困難が待ち受けている。アフメドの妻は、アフメドがキリスト信者になった後、離婚を求めてきた。しかし、多くの現地宣教師たちとの対話を重ねた結果、彼女と彼女の母はイエスを受け入れたのだ。彼らは今、スペインの教会に行くようにまでなったのだ。
シリアの内戦によって、多くの難民が生み出された。にもかかわらず、このような悲劇を通じて、考えられないような多くの人々がイエスを信じるようになったのだ。このような人々は、平和な日々では決してイエスに見向きもしなかったような人々だ。このように、内戦は悲劇的だが、そのような中にあっても、決定的に人々の永遠を左右する福音の実が結ばれている。悲惨な中にあっても、必ず慰めと希望の種をまいてくださる主をあがめよう。
難民問題は今も現在進行形だ。人々が不本意に故郷を捨てる必要がないように祈ろう。またこのような状況にあっても、福音を信じる人々が次々に起こされるように祈っていただきたい。
■ スペインの宗教人口
カトリック 77・8%
プロテスタント 1・8%
英国教会 0・2%
イスラム 2・4%
無神論 19・5%
ユダヤ教 0・7%
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