福音派の世界組織である世界福音同盟(WEA)が、2025年10月に韓国・ソウルで総会を開催する見通しとなった。ソウルの大型教会「サラン教会」が10日、報道関係者向けに、総会の準備を行う組織委員会の発足感謝礼拝を15日に開くと発表した。
韓国の基督日報(韓国語)によると、感謝礼拝は同日午前10時から、汝矣島(ヨイド)純福音教会系の日刊紙「国民日報」の社屋であるソウルのCCMMビルで行われる。同教会のイ・ヨンフン牧師が説教し、総会開催の経緯説明や組織委員会の経過報告などが行われる予定。
総会では、福音主義を世界に広げるための方策や宣教師の保護、迫害に苦しむ人々の人権問題などがテーマとして取り上げられるほか、北朝鮮の問題と関連した内容も扱われる予定だという。
韓国クリスチャントゥデイ(韓国語)によると、サラン教会のオ・ジョンヒョン牧師が組織委員長を務め、同教会が中心となって準備を進めるが、それに汝矣島純福音教会が協力する形になる見通しという。
WEAの総会は通常6年ごとに開催され、前回2019年はインドネシアで開かれた。一方、韓国での総会開催は14年にも計画されたが、同国内の福音派教会の分裂的状況を理由に中止された経緯がある。25年の総会についても、感謝礼拝に関するニュースが伝えられた直後から、中止を求める声が一部で上がっている。
発表翌日の11日には、保守派では韓国最大の教団である大韓イエス教長老会(合同)系の光神大学の関係者らが、「合同教団がWEAと交流できない理由」と題した声明(韓国語)を、国民日報に全面広告として掲載。WEAの神学的アイデンティティーや近年の活動について、宗教多元主義的だとして疑問を呈した。
また、韓国基督教総連合会(CCK)も同日、開催中止を求める声明(韓国語)を発表した。光神大学の関係者らと同じく、現在のWEAの姿勢は宗教多元主義的だとし、「WEAに対する神学的検証が優先されなければならない」と主張。総会開催は韓国のキリスト教界のさらなる分裂を招くとした。
両者は共に、今年3月に任期約2年を残して辞任したWEAのトーマス・シルマッハー前総主事が宗教多元主義的だとして批判している。CCKは2009年からWEAに加盟しているが、声明では「(シルマッハー前)総主事の神学的に不明瞭な姿勢、WEAの他の宗教多元主義的行動により関係を断った」と記している。
韓国クリスチャントゥデイによると、大韓イエス教長老会(合同)もこれまで、WEAの一部の指導層に宗教多元主義的な姿勢があるとして批判的な立場を示してきた。21年の定期総会では、「WEAに対する明確な輪郭が現れるまで決議を留保し、不要な議論を避けることを勧告」する議案を可決したが、教団に所属するサラン教会がWEAの総会開催を主導することになれば、教団内で議論が再熱する可能性がある。
WEAは、原則として各国1つの福音主義連合組織の加盟を認めている。ただし韓国については、2009年に加盟したCCKがその後分裂したことから、新たに組織された韓国教会連合(CCIK)も加盟している。また、福音派の牧師らによる団体である韓国福音主義協議会(KEF)も、協力会員という形で加盟している。
今回の総会開催は、これらの会員団体とはほとんど協議が行われず、WEAの一部の指導層がサラン教会側と直接交渉したことで決まったとされ、今後こうした経緯も議論を呼ぶ可能性が指摘されている。