米半導体大手のインテルが、経営再建のため従業員の15%以上を解雇すると発表した後、パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)が自身のX(旧ツイッター)に聖書の言葉を投稿したことで、さまざまな反響を呼んだ。
インテルは1日、2024年4~6月の四半期決算を発表。売上高は前年同期比1%減の128億3300万ドル(約1兆8900億円)で、最終損益は16億1000万ドル(約2300億円)の赤字となった。
四半期決算で赤字を出すのは2期連続で、インテルは同日、約11万7千人いる従業員の15%以上に相当する約1万5千人の人員削減を年内に行うと発表した。これにより、25年までに100億ドル(約1兆4700億円)規模のコスト削減を行うとしている。一方、この発表を受け、2日の米株式市場では株価が26%下落。インテルにとって1974年以来、この50年間で最悪の下落率となった。
インテルの経営不振は、急成長する人工知能(AI)向けの分野で、別の米半導体大手エヌビディアなどに後れを取っていることが背景にあるとされている。
そうした中、ゲルシンガー氏は4日、自身のX(英語)に旧約聖書の次の一節を投稿した。
目をまっすぐ前に注げ。あなたに対しているものに、まなざしを正しく向けよ。どう足を進めるかをよく計るなら、あなたの道は常に確かなものとなろう。(箴言4:25~26)
歴史的な株価急落の中でCEOが引用した聖書の一節ということだけあり、注目を集めた。X上では、「会社を救うために宗教に頼るの?」「友よ、もう終わったよ。収益報告後のCEOの投稿を見てみてよ」「CEOがXで祈り始めたら履歴書を用意し始めた方がよい」など、批判的な内容が目立った。
その一方で、「ひどいコメントが大量に寄せられていて悲しくなります。パットは敬虔な神を信じる人で、優秀なエンジニアです。彼はインテルの昔ながらのハードコアなエンジニア文化を体現しています。彼に任されたのは、会社を築いたそうした文化から逸脱した会社でした。彼が米国の象徴を立て直そうと努力する中、私は彼の成功を祈っています」と応援するコメントもあった。
18歳でインテルに入社したゲルシンガー氏は、その後30年にわたり勤務した。その間、32歳の時には、インテル史上最年少で副社長に就任。また、01年から09年までは、初代最高技術責任者(CTO)として、インテルの主要な技術開発を導いた。
09年にインテルを退社すると、米データストレージ開発企業EMC(現デルEMC)の社長兼最高執行責任者(COO)に就任。12年には米IT企業ヴイエムウェアのCEOとなり、21年になって古巣のインテルにCEOとして戻ってきた。
ゲルシンガー氏は、米北東部ペンシルベニア州のアーミッシュやメノナイト(キリスト教の教派)の人々が多く住む地域の出身で、家族が経営する農場で育った。敬虔なクリスチャンとして知られ、13年には非営利団体「キリストと共にベイエリアに変革を」(TBC)を共同設立している。TBCは、シリコンバレーに位置付けられるサンフランシスコのベイエリアでジーザス・ムーブメントを起こし、霊的・社会的変革につなげることを目指す団体だ(関連記事:シリコンバレーの宣教最前線、一流IT企業CEOらが参画する包括ムーブメント)。
インテルの最近の状況もあり、4日の投稿が特に注目を集めたが、Xに聖書の一節を投稿することは、ゲルシンガー氏の日課だ。
ゲルシンガー氏のXを見ると、毎週日曜日に聖書の一節を投稿していることが分かる。前週の7月28日には旧約聖書のエレミヤ書29章12節を、翌週の11日には同じく旧約聖書からヨシュア記1章9節を引用している。
そのとき、あなたたちがわたしを呼び、来てわたしに祈り求めるなら、わたしは聞く。(エレミヤ29:12)
わたしは、強く雄々しくあれと命じたではないか。うろたえてはならない。おののいてはならない。あなたがどこに行ってもあなたの神、主は共にいる。(ヨシュア1:9)
ただし、これらの投稿の表示回数はそれぞれ6・4万回と10万回。4日の投稿は2105万回表示されており、いかに注目を集めたかが分かる。