ハンガーゼロ(一般財団法人日本国際飢餓対策機構=JIFH、清家弘久理事長)は4月30日、沖縄事務所(昨年6月閉鎖)の元職員による業務上横領問題に関する内部調査報告書(3月18日付)を発表した。元職員は、世界食料デー沖縄大会(沖縄WFD大会)の事務局員も兼務しており、沖縄事務所と沖縄WFD大会の会計から合わせて、1200万円以上を横領していたという。
報告書によると、元職員は在職中だった2017年7月から23年3月までの6年9カ月間に、沖縄事務所の会計から約160万円、18年度から22年度までの5年間に、沖縄WFD大会の会計から約1100万円、合計で約1260万円を横領していた。
沖縄事務所では、銀行口座から必要以上に現金を引き出して着服し、横領を隠蔽(いんぺい)するために毎月本部に提出していた通帳のコピーを改ざんしていた。また、沖縄WFD大会では、郵便振込口座から不正に出金して着服し、横領を隠蔽するために18年度から21年度の年度末会計報告を改ざん。収入面では集めた寄付金額を少なく計上する一方、支出面では経費を水増しするなどしていた。
元職員の横領は、23年2月末に通帳のコピーなどが本部に提出された際、不審な点があったことで発覚。元職員は17年ごろから、個人的なローンの返済や家族の生活費のために窮することがあり、当初は一時的に必要な金を出金し返金することを繰り返していたが、横領に至るようになったという。
ハンガーゼロは、常勤の事務員配置を望む沖縄WFD大会の要請に応じる形で、大会委員から紹介された元職員を01年から雇用。他の事務所はいずれも複数人が勤務していたが、沖縄事務所のみ元職員1人の体制だった。また、現金による寄付は元職員への手渡しとなっており、席上で集められた寄付が金額の確認なくそのまま元職員に手渡されていたケースもあり、不正が行われやすい環境だった。
元職員は昨年8月までに、約520万円を沖縄WFD大会に返済している。沖縄WFD大会は、元職員が沖縄事務所から横領した全額をハンガーゼロに返済しており、ハンガーゼロとしては既に全額を回収している状況だという。一方、沖縄WFD大会は約740万円の未回収金があり、元職員は約5年かけて分割して返済する計画。そのため、現時点では返済を優先する必要があるとし、刑事告訴や民事訴訟については視野に置きつつ、理事会が最終的に判断するとしている。
ハンガーゼロは再発防止策として、▽複数人で会計業務を実施する体制の構築、▽経理に関する研修の実施、▽他事務所における年1、2回の抜き打ち会計監査、▽協力団体が集めた寄付の本部への直接送金の原則化、▽コンプライアンス体制などの整備と会計監査の拡充、▽理事会体制の強化など、複数の対策を行うとしている。
ハンガーゼロは報告書で、「皆様からの大切な寄付金をお預かりし、運営する団体として、まことに残念な事態であり、痛恨の極みでございます。支援者の皆様には深くお詫びを申し上げます」と謝罪。「役職員一同、本件を厳粛に受け止め、今後は問題点を正しく把握した上で再発防止策の策定、実行に取り組んでいく所存でございます」としている。