自分の召命を求めて、洞窟の中で幾晩も祈ったファラハトだったが、どこからともなく飛んできた聖書の切れ端の御言葉(使徒18:9、10)を通して自分の召しを確信し、彼は献身の道を歩む決断をした。(前回はこちら)
1978年に階叙を受けた若い司祭は、同じモカッタムの山中で奇跡を起こした聖人で、素朴な皮なめし職人として知られる聖サマーン(シモン)を自分の聖職者の名前に冠した。
しかし、彼の開拓初期は非常に困難なものだった。1足の長靴と懐中電灯1つだけを持って、若い司祭はあふれかえるゴミの山を踏みしめた。後に彼の弟子となるある者は、ナイフで司祭を襲い、別の弟子は司祭の目をくらまし、逃げるために豚小屋に隠れた。この地域には社会福祉はなく、主イエスの福音だけが頼りだった。
しかし、何百人もの人々が主を知るようになった。人々は主キリストこそが宇宙の創造主のひとり子であることと、その偉大な尊厳を知るに至ったのだ。やがて村全体が変わっていった。相変わらず臭く、不潔で、ゴミだらけの村ではあったが、イスラム教徒が多数を占めるカイロの中で、その地区はキリスト教信仰に立つユニークな孤島のような地域となった。(次回に続く)
■ エジプトの宗教人口
イスラム 86・7%
コプト教会 11・6%
プロテスタント 0・9%
カトリック 0・4%
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