ベトナムでは、キリスト教徒はいまだ迫害に直面しているが、共産主義国で福音を広めるために苦難に耐えた指導者たちのおかげで、教会は教勢を増している。
リー夫人としても知られるドゥオン・ティさんもその一人で、ベトナムの家の教会運動を始める手助けをした。彼女の好きな聖句はローマ人への手紙12章21節で、そこには「悪に負けてはいけません。かえって、善をもって悪に打ち勝ちなさい」とある。
彼女は5回も投獄されるなど、多くの苦難に耐えた。その試練をどう感じたか尋ねると、彼女はこう答えた。「神が共にいてくださったので、怖くありませんでした」
刑務所では聖書を読むことが許可されていなかったが、教会のメンバーが、差し入れのもち米を包む紙に密かに聖句を書いていたので、限定的ではあるが、なんとか聖句に触れることができた。それで彼女は、刑務所の中でも大胆に福音を分かち合った。
夫人の父親は当時ベトナムで唯一の伝統的なキリスト教会であったキリスト宣教師同盟の牧師を務めていた。父亡き後、父の働きを継いだ彼女だったが、1982年、聖霊のバプテスマを経験すると、彼女の教会は同盟を脱退した。彼女は聖霊のバプテスマについて分かち合うためにベトナムのさまざまな地方を回り、最初のカリスマ・ハウス・チャーチを設立したのだ。
リー夫人は、麻薬依存から幾つかのリハビリセンターを運営するようになったファム・ドゥク・チュン牧師を含む、現在のベトナムの教会指導者の多くを指導した。「私がクリスチャンになったとき、最初に通ったのは彼女の教会でした。彼女は、私が薬物中毒から解放されるためにリハビリセンターを勧めてくれました」とファム氏は語る。
今、リー夫人の遺した信仰の遺産は、牧師や教会の働き手となったリー夫人の子どもたちや孫たちにも受け継がれているという。政治的に信仰が制限されるベトナムだが、キリストにある兄姉たちはそれにも負けず力強く根を張っている。ベトナムの霊的夜明けのために祈っていただきたい。
■ ベトナムの宗教人口
仏教 52・5%
プロテスタント 2・0%
カトリック 7・7%
無神論 23・3%
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