【CJC=東京】イスラム教徒が国民の多数派を占めるマレーシアで、政府は、イスラム教関係以外のメディアが「アラー」という言葉の使用を禁じていた。その後、制限事項を撤廃するなど出版規制が改定された。
カトリック教会の英字紙『ヘラルド』紙のローレンス・アンドリュー編集長は、発行許可更新の際に制限が付けられなかった、として使用したことが問題となった。アブドゥラ・ジン首相府相(宗教問題担当)は2008年1月4日、イスラム教徒以外が「アラー」という言葉を使用することは、許可更新後も引き続き禁止であり編集長の発言は誤解に過ぎない、と語った。さらに国内治安省(内務省)が2月、「イスラム関係者のみ使用できる表現」とし、禁止を命令した。アンドリュー編集長は「イスラム関係者以外の者にも使用が認められる」と主張。撤回を求めて裁判で争う方針を表明した。
政府側は、「アラーという表現を使用する権利の問題は裁判になじまない」と主張したが、ラオ・ビーラン判事は、裁判で争われるべき権利として同年5月5日、クアラルンプールで政府側の請求を退け、提訴を認めると判示した。
『ヘラルド』紙はこの1年以上、イスラム教関係組織やメディアの批判キャンペーンの対象になって来た。原理主義の影響が強まっていることにもよるが、政教分離型の憲法の下で、実際の司法レベルではイスラム教の影響が強いことも影響している。
政府は積極的に問題解決に当たるというよりも、穏やかな解決法を探ろうとしていた模様。
保安相が2月16日、「アラー」の使用禁止を命令、裁判に訴える、と官報に掲載した後で、内務省は、キリスト教出版物は奥付または表紙に「キリスト教徒のみの出版物」と表記すれば、「アラー」の表記が許される、との指示を発した。
『ヘラルド』紙とクアラルンプール大司教区の提訴に対する第1回審理が27日に行われる直前の措置だった。同紙側は不十分ながら前進だ、と評価していた。
しかしシェド・ハミド・アルバル内相は28日、「官報掲載までに誤りがあったと思う。事態を徹底調査しなければならない」とメディアに語った。使用禁止は裁判所の最終判断が出るまでは有効だ、と述べている。