テモテは、ビジネスマンのキリスト信者だ。彼は数年前に夢を見た。夢の中の彼は、死んだ人々に命の言葉を語りかけていた。そしてそれを聞いた人々は、イエスの名によって皆生き返ったのだ。
夢の意味を神に尋ねたところ、テモテはデビッドという兄弟のもとに導かれ、彼の指導で弟子訓練を受けた。2人はその後の4年間で、11の教会を建てた。彼らの開拓で信者になった者たちも弟子訓練を受けて、彼らが113人の新しいリーダーとなり、102の新しい教会を建てることになった。
テモテは毎年、自分のビジネスで得た利益を教会開拓のチームにささげ、60人の教会開拓者が自立できるように支援してきた。
ある日、テモテとデビッドは1週間の旅を計画し、新しく開拓された教会群を訪問することにした。一緒に旅をしている間、彼らはアミールという男に出会い、彼に福音を伝えた。驚いたことに、アミールはわずか数日のうちに神との平和を見いだし、救いの確信を得たのだ。
デビッドは、アミールを弟子としてしばらく導いていたが、彼は伝道するための時間を無駄にはできないと考え、自分のロバの荷車を説教壇代わりにして、すぐさま他の人々に福音を伝え始めた。
以下はアミール自身の証しだ。
「ロバの荷車で働きながら、人々をあちこちに連れて行き、私は彼らにイエスのことを話すんです。彼らは私を牧師や伝道者としてではなく、冗談を言いながら親切にしてくれる荷車の運転手のおじさんとして受け止めてくれます。こうして、1日に60人にイエスを伝えます。私は、彼らの関心を引くような、彼らにとって身近な話題から会話を始めます。『私は、以前はイスラム教徒でした。以前は(イスラム教徒のくせに)酒飲みで、博打にハマっていて、その時には平安がなかった。ところが自分が憎んでいた宗教、つまりキリスト教を学んでそれが分かると、キリストによって与えられる永遠の命と平安が欲しくなり、結局はイエスを主として受け入れたんだ。そして今では、考えられない平和と喜びを得ている』とね」
「ある日、荷車に乗せたある女性が、自分は夫に暴力を振るわれていると私に打ち明けてきました。夫は悪霊へのいけにえとして牛をささげていたため、夫婦は貧しくなっていったのです。彼女は私にどうしたらいいのかと尋ねました。私は解決策があることを教え、イエスのことを話しました。彼女は『イエスが解決策になるのなら、私は喜んでイエスに従います』と言って、その場で主イエスを受け入れました。すると彼女は平安と喜びを見いだしたんです。これは一つの例に過ぎませんが、これまでに300人以上がキリスト信者になりました。荷車の運転手として働きながら、私は4つの教会を開拓し、今ではその教会が他の教会を開拓して、教会が教会を生み出しています。これら全てはイスラム教の地域にあるのです」
「私は毎週断食の日と祈りの日を決めています。そして、病気であろうとなかろうと山に登ります。さまざまな束縛の中にいる人々が救われるように祈っています。世界中の教会開拓者や宣教師のためにも祈ります。人々はしばしば私に願い事を書き送ってきますが、私は、神が彼らの必要なもの全てを祝福してくださるようにと祈っています。私は全ての願いと答えられた祈りを書き留めています。この手記には、904の答えられた祈りが記されています。神が私に何事か語られたときにも、それを書き留めています」
アミールの手記は、丹念に書き留められた何百ページもある手書きの本で、どのページも名前と祈りと願い、その答えで埋め尽くされている。彼は荷車を運転するときは、いつもその本を持ち歩いている。
今では市場の多くの人々が、あえて自動車のタクシーを避けて、アミールが運転する揺れが激しくノロノロと進む、ロバの荷馬車のタクシーを待っているという。
ただでさえ宣教の困難なイスラム教の地域で、ロバに言葉をお与えになった神は、ただの「ロバのタクシーのおっちゃん」をご自身の精鋭たる伏兵として宣教地に置かれ、命の言葉を宣べ伝えさせておられる。
パウロが2年間エペソに滞在した結果、アジアに住む者が、ユダヤ人もギリシャ人も皆主の言葉を聞いた(使徒19:9、10)。神の国の拡大は、足し算ではなく掛け算だ。キーワードは、自分と同じことができるように人材育成をする「弟子化」にあるのだろう。
宣教の困難な西アフリカだが、テモテ、デビッド 、アミールなどの草の根の弟子たち、主の精鋭たる伏兵たちが大きな働きをしている。西アフリカの福音化と弟子化のために祈っていただきたい。
※登場する人物は仮名です。