中米ニカラグアの裁判所は10日、カトリック教会のロランド・アルバレス司教(56)に対し、26年4月の禁錮刑を命じた。アルバレス司教は当局から政権に対する批判者として見なされており、禁錮刑の他に、約20万円の罰金と国籍剥奪も命じられた。
ロイター通信(英語)やカトリック系のCNA通信(英語)によると、アルバレス司教は反逆罪のほか、国家安全保障と国家主権を損なう罪、フェイクニュースを流布した罪、公務執行妨害、加重不服・権力侮辱罪などで有罪とされた。
ニカラグア当局は、受刑者の大量釈放を度々行っており、アルバレス司教の判決が言い渡される前日9日には、222人の政治犯を釈放し、米国へ国外追放していた。アルバレス司教もこの日の釈放候補に含まれていたが、独裁政権の弾圧に苦しむニカラグアの信者らのために国にとどまることを決め、米国行きの飛行機に搭乗することを拒否していたという。
ロイター通信によると、アルバレス司教の判決言い渡しは当初、3月下旬に予定されていたが、説明なく早められた。同国のダニエル・オルテガ大統領は9日のテレビ演説で、釈放した受刑者らをニカラグアの主権を損なおうとする外国勢力の犯罪的傭兵(ようへい)だと揶揄(やゆ)し、アルバレス司教が搭乗を拒否し、拘置所に差し戻されたと語っていた。
米下院のグローバルヘルス世界人権国際機関小委員会議長であるクリス・スミス議員(共和党)は10日、声明(英語)を発表し次のように述べた。
「人権のために収監されていたニカラグアの200人以上の受刑者が、オルテガ氏の極端な政治的抑圧から解放されたことは歓迎するが、われわれは残忍なオルテガ政権と戦い、残りの受刑者を解放するための活動を続けなければならない。自身の群れを見捨てることを拒否した勇気あるロランド・アルバレス司教もその一人である。彼はまさにキリストのように奉仕の心を持った人物であり、われわれはローマ教皇フランシスコが彼のために明確に発言し、彼の解放を求めるよう求め続けている」
バチカン・ニュース(日本語版)によると、教皇フランシスコは12日、正午の祈りの中でアルバレス司教の判決に対し憂慮を表明。アルバレス司教と国外追放された人々、またニカラグアで苦しむ全ての人々に対する思いを述べ、信者らに祈りを求めた。
同ニュースによると、ニカラグアでは、当局から政権に対し批判的だと見なされれば弾圧の対象とされる。逮捕や国外追放などが相次いでおり、教会関係者も例外ではないという。アルバレス司教は昨年8月、司教館から強制的に連れ出され、首都マナグアで自宅軟禁にさせられた。他にも司祭2人が禁錮刑を受けているという。一方、共謀罪で禁錮10年を言い渡されていた司祭5人、助祭1人、神学生2人は今回、国外追放され米国に到着したという。