プロテスタントとカトリックの諸教会が合同で開催している「キリスト教一致祈祷週間」が18日から始まった。今年のテーマは、イザヤ書1章17節から「善を行い、正義を追い求めなさい」。25日までの8日間、世界中のさまざまな伝統や信条を持つキリスト者たちが、それぞれの地で集会を開き、洗礼を受けた全ての人の一致を求めて祈りをささげる。
キリスト教一致祈祷週間は1908年、米メリーランド州出身のポール・ワトソン神父の提案で始まった。ワトソン神父は聖公会の司祭だったが、アッシジの聖フランシスコに強く憧れ、キリスト教の再一致を求めて新しい修道会「アトンメントのフランシスコ会」を設立。当時祝われていた聖ペトロの祝日(1月18日)と、聖パウロの祝日(1月25日)を結ぶ8日間を、キリスト者の一致を求める週間と定めて祈るようになった。
その後、1916年に当時のローマ教皇ベネディクト15世が、祈祷週間の順守を求める教書を公布するなどし、全世界に広がっていった。第2バチカン公会議後の1968年以降は、世界教会協議会(WCC)とローマ教皇庁キリスト教一致推進評議会(PCPCU)が、参加を呼びかける小冊子を毎年共同で発行するようになった。日本でも、日本キリスト教協議会(NCC)とカトリック中央協議会が共同で日本語の小冊子を発行し、相互の一致を促している。
毎年のテーマの選定や各種資料の作成は、その年の担当国・地域の諸教会が行う。今年は、米国のミネソタ教会協議会が招集した同国のキリスト者グループが担当した。
米中西部の北に位置し、カナダと国境を接するミネソタ州は、長年にわたって人種間格差を抱えてきた地域。2020年5月、黒人男性のジョージ・フロイドさんが、白人警官のデレク・ショビン受刑者に首を押さえ付けられ、殺害された事件が起こった地でもある。米国ではこの事件をきっかけに、「ブラック・ライブズ・マター(BLM=黒人の命も大切)」運動が各地に広がった。
今年の小冊子は、フロイドさんの事件の他、ミネソタ州で1862年、米国史上最大の大量処刑とされる先住民ダコタ族38人の一斉処刑が行われたことなどに言及。この38人が死を覚悟して歌ったという賛歌「ワカンタンカ・タク・ニタワ(多くの大いなる)」も収録している。
今年のテーマとなる聖書テキストは、イザヤ書1章12~18節。紀元前8世紀ごろとされる当時のイスラエル王国とユダ王国は不正がはびこる社会で、その中で厳しい預言の言葉を宣布したのがイザヤだった。
小冊子は当時の状況を、これまでのキリスト教の歴史や現代の状況にも重ね合わせ、「聖書に登場する預言者たちから激しく非難された祭司たちのように、キリスト者の中にも偏見と抑圧を支持し、永続させ、分裂の助長に加担し、現在もそうし続けている人がいます」と指摘。「善を行うことを学ぶには、自己内省する決心が必要です。一致祈祷週間は、私たちの諸教会や諸教派間の分裂が、より広い人類家族の分裂と密接につながっていることをキリスト者が認識する絶好の機会です」としている。
また、「正義を求めるには、他者に悪を加える人々との対峙(たいじ)が必要です」と強調。「地域にある諸教会は、自分たちがいかに社会的規範に迎合し、人種に関する不正義に沈黙し、あるいは積極的に加担してきたかを認めなければなりません」「キリスト者として私たちは、抑圧のシステムを壊し、正義を擁護する意志を持たなければなりません」と訴えている。
小冊子は、▽テーマの解説、▽エキュメニカル礼拝式文、▽8日間の聖書の黙想と祈りなどが盛り込まれており、期間中だけでなく、一致を求める個人の祈りや共同の祈りのために年間を通して使用できるようになっている。
キリスト教一致祈祷週間に関連する国内行事の一覧は、カトリック中央協議会がホームページで公表している。東京は18日にオンライン集会が行われ、NCCの吉高叶(かのう)議長が司式を務め、カトリック東京大司教区の菊地功大司教が説教を取り次いだ。