2001年9月11日の米同時多発テロ事件で破壊された米ニューヨークの教会が、21年ぶりに礼拝を再開した。
礼拝が再開したのは、テロ事件の標的となった世界貿易センターの崩壊に巻き込まれ、聖堂が破壊された聖ニコラス教会(正式名:聖ニコラス・ギリシャ正教会全国聖堂)。聖ニコラスの祝日である昨年12月6日に、再建後初となる礼拝が行われた。
再建を資金面で支えてきた「聖ニコラス友の会」のマイケル・プサロス会長は、声明で次のように述べた。
「今日は、われわれ全員にとって非常に感動的な日であり、ニューヨークと米国にとって特別で重大な日です。私たちは、追悼と回復の場であるこの場所で、信仰と霊の聖なる炎を再びともしたのです。私たちは、全国的な施設である新聖堂に、聖ニコラスに慰めと安らぎを見いだそうとする、世界中のあらゆる信仰や国籍を持つ何百万人もの人々をお迎えできることを楽しみにしています。聖ニコラスは、まさに人生を旅する全ての人々のための守護者だからです」
プサロス氏は、3千人近いテロ事件の犠牲者を偲んで建てられた新聖堂には、誰もが訪れることができると述べた。
家族がテロ事件前から聖ニコラス教会に通っていたマリア・ヤトラキスさんは、AP通信に対し次のように語った。
「教会がこのように再建され、この教会の設立に協力した全ての移民を象徴する自由の女神の近くにあるのを見るのは、私たち全員にとって非常に感動的です」
米建築専門誌「アーキテクチュラル・ダイジェスト」(英語)によると、旧聖堂が破壊された後、スペイン人建築家のサンティアゴ・カラトラバ氏が、新聖堂の設計者に選ばれた。カラトラバ氏が設計した新聖堂は、東ローマ帝国時代の建築様式であるビザンツ建築から大きな影響を受けているという。
カラトラバ氏は、次のように述べている。
「聖ニコラス・ギリシャ正教会全国聖堂がついに活動を再開したことは、ロウアー・マンハッタン地区の輝かしい未来と決定的な過去を象徴しています。私はこの建物が、礼拝のための聖域としてだけでなく、この街が耐えてきたことや、いかにこの街が前進しているかを振り返る場所としての役割をも果たすことを望んでいます」
同誌によると、新聖堂の巨大なドームを支える石材で覆われた4つの塔は、ギリシャのアテネにあるパルテノン神殿でも使われているペンテリコン山の大理石で造られているという。
聖ニコラス教会の再建はこれまで、新聖堂の建設場所をめぐる法的論争を含め、多くの複雑な問題に直面してきた。
新聖堂の建設場所を巡っては、教会側が世界貿易センターを所有していたニューヨーク・ニュージャージー港湾局を提訴。訴訟の結果、旧聖堂があった場所に近く、世界貿易センターのツインタワー南側に位置するリバティーパークの隣接地に新聖堂を建設することで合意した。
新聖堂の建設は2014年から始まったが、資金難により17年に工事が中断。その後20年に、聖ニコラス友の会が必要資金4500万ドル(約58億円)を調達し、工事が再開した。
当初は、テロ事件発生から20周年となる2021年の再開を目指していたが、それでも工事は長引いた。21周年を前にした昨年7月に新聖堂の成聖式が行われ、今回こうして礼拝が行われたことで、教会としての機能が完全に回復したことになる。