小説「塩狩峠」の主人公のモデルとなった長野政雄が殉職して、今年で100年を迎える。それを記念して今月27日から「『塩狩峠』100年メモリアルフェスタ」(同実行委員会主催、NHK旭川放送局、北海道新聞旭川支社、北海道旅客鉄道株式会社旭川支社、旭川市教育委員会、旭川市内教会連合、三浦綾子記念文学館、塩狩峠記念館友の会後援)が北海道で開催される。
塩狩峠は、旭川市の隣町である比布町と和寒町の境目にある。明治42年2月28日、旭川・稚内間を結ぶ鉄道宗谷本線の塩狩峠で連結器が故障し、客車が突然切り離されて逆走。そこに乗り合わせていた当時国鉄職員であった長野政雄は、人命救出のために自らの身を投げて列車を止めたという。
長野は、三浦綾子と同じ日本基督教団旭川六条教会の信徒であり、誰からも尊敬を集める敬虔なキリスト者であった。「塩狩峠」のあとがきで三浦は、後に長野の生涯について知ったとき、その信仰のすばらしさのゆえに「叩きのめされたような気がした」と記している。
三浦はこの史実を題材に、昭和41年4月から2年半にわたって日本基督教団出版局の月刊誌「信徒の友」に「塩狩峠」を連載。この作品は、新潮社からの出版が始まるとたちまち大きな反響を呼んだ。これまでに映画化や海外への翻訳も多数行われ、三浦文学の中でもとりわけ人気の高い作品として親しまれている。
今回の企画では、長野政雄の居住地跡や当時の旭川教会跡の見学、旭川市の市民交流センターで開かれる講演会への参加、塩狩峠記念館での記念会、交流会などが予定されている。講演会では三浦綾子の夫である三浦光世さん、また塩狩峠記念館での交流会では「塩狩峠、愛と死の記録」の著者である中島啓幸さんが講演する。
問い合わせは、森下(0166・62・3754)、中島(090・6219・0091)。