文化審議会は18日、同日開催された同審議会文化財分科会の審議・議決を経て、新たに109件の建造物を、国の登録有形文化財(建造物)に登録するよう、文部科学相に答申した。
文化庁のホームページで公開された一覧表によると、キリスト教関係では、▽国際基督教大学(ICU)のディッフェンドルファー記念館東棟(東京都三鷹市)、▽稲荷山諸聖徒教会(⾧野県千曲〔ちくま〕市)、▽聖贖主(せいあがないぬし)教会(大阪市)が選ばれた。
ディッフェンドルファー記念館
ディッフェンドルファー記念館東棟(1958年建築、2000年・21年改修)は、ICUの構内西寄りに建つ講堂兼学生会館で、ヴォーリズ建築事務所が設計。北壁噴水の内側にオーディトリアム(講堂)を配し、中庭を中心とした正方形平面で、水平性を強調したガラス面とそのアルミサッシなどが「戦後モダニズム建築の秀作」とされた。
⽇本で最初に構想された本格的な学⽣会館で、ICUは「建学の理念を象徴している稀有(けう)な建造物」としている。また、00年と21年に行われた2度の大規模改修は、いずれも原設計者の後継者らによって当初の建物の価値が失われないように注意深く行われたという。
現在もオーディトリアムではさまざまなイベントが開催されており、学生クラブ活動室、宗務部などがある。学生や教員の間では「D館」と呼ばれ、交流の場として活発に利用されている。17年には、ドコモモジャパンの「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」にも選ばれた。
建物の名称は、ICUの設立に貢献した日本国際基督教大学財団(JICUF)初代会長のラルフ・ディッフェンドルファー博士(1879~1951)にちなむ。ICUの建造物が登録されるのは、1999年の泰山荘に続き2件目。
稲荷山諸聖徒教会
稲荷山諸聖徒教会(1933年建築、87年改修、2003年増築)は、日本聖公会中部教区の教会。切妻屋根が印象的で、両側面にバットレス(控壁)風の柱形と半円アーチ形窓が並ぶ。内部は単廊式で、会衆席・聖所・至聖所が軸線上に並び、地下には納骨堂がある。「地方の昭和初期鉄筋コンクリート造教会として貴重」と評価された。
聖贖主教会
聖贖主教会(1936年建築、87年・2014年改修)は、日本聖公会大阪教区の教会で、社会福祉法人「博愛社」のチャペル(礼拝堂)としても用いられている。ヴォーリズ建築事務所が設計したロマネスク調の鉄筋コンクリート造で、正面のバラ窓と鐘楼(しょうろう)塔屋、タレット(円筒型の小塔)が特徴的。「意匠平明で落ち着いた空間の教会建築」と評価された。
1934年に近畿地方を襲った室戸台風により、前身の教会堂が倒壊したため、鉄筋コンクリート造3階建ての堅固な施設として、現在の教会堂が建てられた。内部は1階が博愛社のためにも使用する集会室、2~3階が吹き抜けの礼拝堂となっている。礼拝堂は、両側面の縦長アーチ窓から光を取り込む明るい会衆席と、聖壇背面のステンドグラスが印象的。
国の登録有形文化財(建造物)とは?
今回答申された109件は今後、官報での告示を経て正式に登録される。登録されれば、国の登録有形文化財(建造物)は、1万3639件となる。
国の登録有形文化財(建造物)は、建築物、土木構造物、その他の工作物のうち、原則として建設後50年を経過し、かつ、1)国土の歴史的景観に寄与しているもの、2)造形の規範となっているもの、3)再現することが容易でないもの――のいずれかに該当するものが選ばれる。
今回登録が答申されたキリスト教関係の3件の登録基準はいずれも、「造形の規範となっているもの」だった。