国の文化審議会(佐藤信会長)は19日、京都ハリストス正教会(京都市中京区)の木造聖堂「生神女(しょうしんじょ)福音聖堂」など、10件の建造物を国の重要文化財に指定するよう、末松信介文科相に答申した。今年度中に官報告示される見込みで、これにより国の重要文化財(建造物)は2311件4989棟となる。
文化審議会の発表によると、生神女福音聖堂は1903(明治36)年の建築で、日本ハリストス正教会の本格的な木造聖堂としては現存最古の遺構。装飾が少なく簡素ではあるが、クーポル(丸屋根)が特徴的で、鐘楼を組み合わせた均斉の取れた美しい外観をしている。
内部は、信者らが入れる「聖所」と聖職者のみが入れる「至聖所」(しせいじょ)に分かれており、仕切りとなる「聖障」(せいしょう=イコノスタス)はロシア製。ハリストス正教会から提供された図面をもとに、京都府の技師・松室重光が実施設計しており、日本における教会堂の建設経緯が知られる貴重な事例となっている。
国の重要文化財として指定が答申されたのは他に、▽旧三井銀行小樽支店2棟(北海道小樽市)、▽ニッカウヰ(い)スキー余市蒸溜所施設10棟(同余市町)、▽上野家住宅5棟(山梨市)、▽江埼灯台1基(兵庫県淡路市)、▽美保関灯台3棟(島根県松江市)、▽出雲日御碕灯台1基(同出雲市)、▽香川県庁舎旧本館及び東館1棟(高松市)、▽若戸大橋1基(北九州市)、▽鹿児島神宮3棟(鹿児島県霧島市)の9件。この他、霧島神宮本殿・幣殿・拝殿(同)は、国宝としての指定が答申された。