日本基督教団涌谷(わくや)教会(宮城県涌谷町)から解任された元牧師の瀧澤雅洋氏が、解任決議の有効性などを巡って同教会と争っていた訴訟で、仙台地裁(大寄麻代裁判長)は9月27日、滝澤氏の請求を全面的に棄却する判決を言い渡した。滝澤氏は解任後も牧師館を占有しており、同地裁は明け渡しを命じるとともに、解任後の2020年2月から明け渡しを行うまでの期間の賃料相当損害金として月額5万5千円を支払うよう命じた。
訴訟は、同教会が設立母体の涌谷保育園で、当時園長だった滝澤氏からパワーハラスメントを受けたとして、職員が大量退職したことに絡むもの。判決によると、同教会は19年10月、臨時教会総会を開き、同園でのパワハラなどを理由に滝澤氏の主任担任教師(牧師)解任を決議。翌11月には東北教区総会議長が承認した。さらに、20年1月には教団総会議長が同意したことで、滝澤氏は代表役員からも解任された。
滝澤氏は、臨時教会総会の開催を決議した19年9月の臨時役員会、また臨時教会総会そのものについても、手続き上の問題があったとして、解任決議などの無効を主張。自身が現在も同教会の代表役員の地位にあることを確認し、報酬を支払うよう求めていた。また、解任理由として挙げられたパワハラについては「事実無根」であるとし、解任は実体要件を欠き、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものだと主張していた。これに対し同教会は、解任決議などの有効性を主張するとともに、牧師館を明け渡し、賃料相当額を支払うよう求めていた。
これらの主張について仙台地裁は、臨時役員会の臨時教会総会開催決議、臨時教会総会の解任決議いずれについても、同教会規則などに照らし合わせて有効性を認定。パワハラについては直接の認定はしなかったものの、「少なくとも本件保育園(涌谷保育園)の関係者らのうち多くの者の間では原告(滝澤氏)の職員らに対する言動等が問題視され、原告に対する信頼関係が失われつつある状況が生じていたものと認められる」と指摘。同教会の信徒らが、滝澤氏の牧師としての適正について疑問を持ち、「今後信徒として原告から信仰指導等を受けることは望まないと判断したとしても、不合理とはいえない」とし、解任は解除権の濫用とはいえないとした。
滝澤氏のパワハラを巡っては、涌谷保育園の元職員12人が、運営元である社会福祉法人涌谷みぎわ会を相手取り、計2640万円の損害賠償を求めて提訴し、係争中。滝澤氏は現在も同法人理事長の立場にある。