カナダの裁判所は、性的虐待の被害者へ支払う和解金確保のため、カトリック教会が所有する不動産43件を売却することを承認した。不動産などの資産の売却は、今後さらに行われる見通しだという。
カナダ北東部ニューファンドランド・ラブラドール州を管轄するカトリック教会のセントジョンズ大司教区は、同州最高裁の承認を受け、教会や大聖堂13件を含む、計43件の不動産を売却する予定だ。売却総額は、約2060万ドル(約27・4億円)に上る。
同教区は米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」(英語)の取材に対し、不動産売却のために裁判所が任命した監査法人アーンスト・アンド・ヤング社の報告書(英語)を提示した。それによると、不動産の購入者は、バシリカヘリテージ財団やロッキーヒル・ホールディングス、エメラルド・アトランティック・グループなど約30の団体や企業。43件のうち19件は「空き地」で、このうち1件は、カナダ最大規模の自然保護団体であるカナダ自然保護協会(NCC)が、別の1件はセントジョンズ独立学校が入札の結果、購入者として選ばれている。
売却リストの中には、教区の司教座聖堂である洗礼者ヨハネ・バシリカ大聖堂やその司牧センター、セントボナベントゥラ学校、セントボンフォーラムなど、歴史的な建物も含まれている。ただし、これらの購入者はいずれも、洗礼者ヨハネ・バシリカ大聖堂の保護のために設立されたバシリカヘリテージ財団であるため、売却後も現状通りの使用ができるという。
同教区のピーター・フント大司教は、教区関係者に向けた文書(英語)で、「教会の売却とそれに伴う小教区の合併は、教区のすべての信者と聖職者にとって痛ましく、悲しみを伴うプロセスです」とコメント。その上で、「虐待の被害者に対する法的義務を果たし、前向きで持続可能な方法で教区を再編成しようとするこのプロセスを前進させるために努力しているすべての聖職者と信者に非常に感謝しています」と述べ、被害者や教区の一人一人のために祈るよう求めている。
カナダの公共放送CBC(英語)によると、売却不動産は当初42件だったが、その後、セントポール教会が追加されたことで43件となった。