長年にわたる社会的、政治的、経済的混乱が首都ベイルートを疲弊させていたが、2020年の爆発事故はそれに駄目押しをした。トラウマの癒やしと希望の回復の必要性を感じた宣教団体「Multiplying Hope」(MH)は、あるプロジェクトをスタートした。その目的は、日常生活の中でトラウマに対処するための教育を行い、イエス・キリストの福音を伝え、再現性のある癒やしのグループを市内各地に作ることだった。
真の癒やしは、その人の霊性を無視しては起き得ない。現在では、地元のレバノン人が導く癒やしのグループが複数存在し、それぞれが新しいリーダーやグループを生み出している。MHの使命は「御国の共同体の拡大を通して、過去の傷からの癒やしの旅をする人々に必要を備え、力を与え、パートナーになること」だという。
彼らは、処置されていないトラウマは、神の愛を聞き、理解し、成長することの妨げになることをよく知っている。そのため、福音を伝え、健全で再生産可能な教会を建てることに関心を持つ信者は、トラウマに大きな注意を払う必要があるというのだ。
MHでは、信徒が安全かつ責任を持って、効果的に卜ラウマに対処するために必要な基本的なツールを身につけさせ、力を与えることに注力している。彼らは、オラリティー(体験学習と語り)の原則を用い、人々が神の救済の物語を内面化し、共有できるよう支援している。トラウマを抱えた人々は、読み書きによる学習環境よりも口頭での環境の方がより効果的に反応する。
MHの関係者は「掛け算は聖書のパターンです」と述べる。「計り知れない慰めの源である神は、私たちを慰めてくださるので、私たちも苦しんでいる人たちを慰めることができます。癒やしのグループに参加された人々の励ましの証しがたくさんあります」と締めくくった。
社会不安が一気に噴出し、疲弊しきっているレバノンだが、人々のトラウマが福音によって癒やされ、同国の救霊が進むよう祈っていただきたい。
■ レバノンの宗教人口
イスラム 59・0%
プロテスタント 0・6%
カトリック 23・9%
正教 7・3%