【CJC=東京】バラク・オバマ米大統領が人工妊娠中絶の権利を擁護する方向に政策を転換させたことについてバチカン(ローマ教皇庁)が早くも反発の姿勢をあらわにしている。
米司教会議は1月13日と16日の二度にわたって、大統領就任直前のオバマ氏に宛て、フランシス・ジョージ会長(シカゴ大司教)が署名した書簡で、新政権と建設的に協力する意向を示したものの、「人類の中の胎児や障がい者、末期病者など、最も無防備で無言の命を守るために働く」と述べていた。
オバマ大統領は23日、海外で人工妊娠中絶を含む家族計画指導などに当たる民間団体への連邦助成金支出を認める大統領令に署名した。
それを受けてかバチカン生命アカデミー議長のリノ・フィジケラ大司教は24日付のイタリア紙コリエレ・デラ・セーラでのインタビューで、「失望する日は近い」と批判した。
生命アカデミー前議長のエリオ・セレッシア大司教もオバマ氏の妊娠中絶容認決定を批判している。同大司教は引退後も生命倫理問題ではバチカンの意向に強い影響を与えている。同氏はイタリアのANSA通信に「この処置は、私たちカトリック者に対してだけでなく、全世界の、中絶という罪のない生命の虐殺に反対している人たちにとって大打撃だ」と語っている。
米新政権登場後、初のバチカン側の反応を見る限り、バチカンはブッシュ前政権の同性婚や中絶反対の姿勢を支持していたが、オバマ政権との間では、ぎくしゃくした関係が続きそうだ。