私たちの働きは、宣教の仕組みを構築することですので、常に、現状の課題を分析し、事業内容に工夫を加えるようにしています。利用料金においても、当面の利益より、宣教の拡大を見越した設定とし、生活困窮者には、特別な配慮のできる仕組みを検討しています。
貧しさの拡大する日本社会では、急な出費が大きな経済的負担になることも多いため、柔軟な仕組みを用いて、臨機応変な対応を心掛けたいと思っています。
急に召された母親の火葬式を依頼
先日、お母様が突然召され、大きな悲しみの中で、娘様が葬儀依頼の連絡を下さいました。淡々と話しておられましたが、つらい状況が電話越しに伝わってきました。
経済的に余裕がないらしく、最も低額の葬儀プラン(火葬式のみ)を依頼されましたが、牧師にはぜひ祈ってもらいたいとのことでした。娘様自身は未信者でしたが、お母様の祈る姿を度々見ておられたそうです。
火葬式のみのプランの場合、火葬場で賛美歌を歌い、牧師が祈りを導きますが、通常、火葬場の都合で十分な時間が取れません。また、複数の火葬炉が近接していることが多く、心を静めてお別れをするには、あまりふさわしい場とは言えません。
このような火葬式ですが、できるだけ遺族に寄り添うため、連携する牧師には、状況に合わせ、遺族と共に過ごす時間を、火葬式前後にも設けてほしい旨を日頃から伝えていました。
牧師の司式をキャンセルしたい
今回お願いした牧師も、遺族の状況を詳しく聞き取ってくださり、葬儀社と連携し、寄り添える時間を確保しようと備えてくださっていました。神様が牧師を通し、慰めと祝福を届けてくださるように祈るばかりでした。
ところが葬儀の直前、牧師の司式をキャンセルしたい旨の連絡が入りました。火葬の日程が伸びたため、遺体安置の料金がかさみ、司式をお願いする余裕がなくなったのが理由でした。
寄り添うことを心に決めていた牧師は、私たちの働きの趣旨をよく理解していましたので、すかさず、弊社の働きから切り離し、個人的に無償で司式に対応することを申し出てくださいました。遺族への配慮を最優先に選んでくださる牧師の気持ちを大変うれしく思いました。
無償で寄り添うことの大切さ
人は、神様を愛し、隣人を愛するために生きています。そしてすべての営みは、この愛する働きが円滑に進められるために存在しなければなりません。貧しさの故に、隣人愛をもって寄り添う牧師の働きが留められるのは避けたいところです。
無償で寄り添うことを申し出てくださった牧師の気持ちを大変うれしく思いましたが、依頼者にすれば、それまでの丁寧な対応に加え、火葬式の司式を無償で牧師個人にお願いするのは、気が引けることかもしれません。
そこで、私はこの葬儀式を、もう一つの法人(一社)善き隣人バンクの働きに切り替えることを提案しました。この法人は、非営利団体として無償で寄り添うために作られたもので、一般からの寄付で成立しています。
牧師は、私の提案を受け入れてくださり、(一社)善き隣人バンクの働きを依頼者に紹介してくださり、すべて最後まで無償で寄り添うことができました。対応してくださった牧師には、少ない額になりましたが、尊い働きへの感謝献金を受け取っていただきました。
葬儀は、人にとって非常に大切な通過儀礼です。愛するお母様のご遺体を火葬炉に送り、灰になって戻ってくる様子に、娘様の心はさらに打ちひしがれたことでしょう。その現場に寄り添い、神様の慰めをこいねがう牧師の祈りは不可欠だったと思います。
宣教の仕組みを構築する
私たちの宣教の働きは、神様の祝福を多くの日本人に届けるため、隣人愛をもって寄り添う人々の温かい心をつないでいきます。硬直化したこの世の仕組みは、弱さを抱える人々を顧みることを拒みますが、神様は、隣人愛を持ち運ぶ新しい革袋を備えてくださると信じています。
宣教の働きを事業で支えるブレス・ユア・ホーム(株)、隣人愛をもって無償で寄り添う(一社)善き隣人バンク、そしてこれらの働きに関わってくださる多くの地域教会、牧師、連携者の皆様、その他事業者の皆様、それぞれの働きが神様の御旨に沿って組み合わされ、日本宣教が拡大する姿を思い描いています。
このような宣教の仕組みの構築には、まだ何年も、あるいは何十年もかかるかもしれません。しかし、神様の祝福は、やがて日本全土を覆っていくことでしょう。その時を待ち望みつつ、忍耐をもって毎日を過ごしたいと思います。
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