Skip to main content
2026年6月25日17時52分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
ケーテ・コルヴィッツの生涯

労働者の母―ケーテ・コルヴィッツの生涯(8)繁栄の陰の悲惨

2022年6月1日21時39分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
労働者の母―ケーテ・コルヴィッツの生涯(1)ふみにじられたもの+
ケーテ・コルヴィッツ(1867〜1945、写真:Philipp Kester)

1891年、24歳になったケーテは、医師カール・コルヴィッツと結婚し、労働者街に移り住んだ。このあたりには教会がなかったので、ギュストロフの町で牧会をしているシュヴァルツコップのもとを訪れ、彼に挙式をしてもらうことにした。

この人はカールと古い知り合いで、医者になるつもりだったが、郷里で急逝した父親のあとを継いで牧師となったのだった。そしてくしくも、彼もまたユリウス・ルップと同じ「自由宗教派」に属していたのである。

懐が広く、温かな人格者である彼は町の多くの人々から慕われており、貧しい家庭の子どもたちを集めて開いていた「日曜学校」は大評判だった。シュヴァルツコップ牧師は2人の結婚をことのほか喜び、彼らをめあわせ、祝福してくれたのだった。

彼らが新居となった労働者街の診療所に帰り着くと、まだ着替えもしないうちに、激しく扉をたたく者があった。「先生、開けてくださいまし!」カールが扉を開けると、中年の女性が倒れ込むように入ってきた。「ああ、先生! 私、主人に殺されます」。彼女は目の下に黒いくまを作り、歯ぐきからは血が流れ出ていた。それはバンコップというべっこう職人の妻だった。

「どうしました?」カールは急いで白衣を羽織り、彼女を診療室に導いて椅子に座らせた。診察すると、体に4カ所打撲の跡があり、歯が2本折れていた。ケーテは診療助手を務め、まず口の中を消毒し、折れた歯を取り除いて薬をつけた。それから、体の打ち傷にこう薬をつけた。

「これで様子を見てください」。カールは、痛み止めの錠剤を与えた。「ああ、先生。何という生活でしょう」。バンコップ夫人は、あふれ出す涙を手で拭きながら訴えた。「主人の暴力はだんだんひどくなってきて、さすがに子どもには手を上げませんけれど、あたしには殴る、蹴るの暴行をはたらくんです。あの人、失業する前は、本当に優しい人だったのに」

カールはしばらく痛ましそうに彼女を見つめていたが、ふと気がかりな様子で尋ねた。「エミール君は毎日工場に働きに行っているんですか?」すると、またしてもバンコップ夫人は泣きながら訴えた。「あの子、朝暗いうちから家を出て、夜中に帰ってくるんです。でも、3日ほど前から嫌なせきをするんです」

「それでは、明日にでもエミール君をつれてきてください」。「でも・・・あの子絶対に工場を休まないんです」。「手遅れにならないうちに、絶対つれてきてください」。カールが強く言うと、ようやくバンコップ夫人はうなずき、帰っていった。

「あそこの家族は、もうボロボロだよ」。カールは言った。バンコップはべっこう職人だった。家族を養い、そこそこの暮らしをしていたが、やがてこの町に工場が建つと、家内工業が落ち目になり、とうとう廃業せざるを得なくなった。仕事は見つからず、悶々(もんもん)とするうちに、彼はうつ病になり、妻に暴力を振るうようになったという。

それからしばらくすると、今度は杖にすがった老人がやってきた。左足が腫れ上がっている。「どうしましたか?」と尋ねると、老人は顔をしかめて話し出した。「工場で機械に挟まれましてね。何とか足を切らずに済んでいるんですが、傷が化膿しちまったんです。でも、私らは日雇いでして保険に入れず、医者に見せられませんでした。でも、こちらのお医者様は貧乏人を助けてくださるといううわさを聞いたものですから。先生・・・何とか助けてください」

カールは妻を助手にして、麻酔の注射を打った後、患部を切開し、膿(うみ)を出してからまた縫い合わせた。「薬をあげますからね。1日に2度塗って包帯を変えてください。それから痛み止めの薬も出しておきましょう。仕事は2、3日休めますか?」そう尋ねると、老人は言った。「休めば仕事がなくなっちまいます。息子夫婦が死んじまったものでね。6歳の孫を養わなくちゃならないんです」。3日後にまた来るように言ってから、カールは患者を帰した。

ケーテはあることに気付いた。それは、貧しい生活をする者ほど病気やけがをする者が多い――という残酷な現実だった。

*

<あとがき>

カール・コルヴィッツ医師と結婚したケーテは、第二の人生を始めるべく「労働者街」に移り住みます。しかし彼女を待っていたのは、想像以上に悲惨な生活を抱える労働者とその家族たちでした。失業の末、絶望から妻に絶え間ない暴力を振るうバンコップ。その夫人は助けを求めて診療所に駆け込んできます。また、小さな孫を養うために工場で働くうちに、機械に挟まれてけがをした老人もいました。

コルヴィッツ夫妻はこれらの患者たちに手厚い治療を施し、治療費ももらわずに薬を持たせて帰します。彼らが保険にすら入っていないことを知っていたからでした。バンコップ夫妻にはエミールという息子がいますが、年もいかないのに工場で働くうちに、劣悪な環境と過労のためにすでに肺を患っていました。

ケーテは、どん底生活をするこれらの人々と接するうちに、恐ろしい法則を知ります。それは、生活に困窮する者ほどけがや病気のリスクを負うことが多いということでした。

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
  • ツイート

関連記事

  • 労働者の母―ケーテ・コルヴィッツの生涯(7)人生の掃き溜め

  • 労働者の母―ケーテ・コルヴィッツの生涯(6)版画家への道

  • 労働者の母―ケーテ・コルヴィッツの生涯(5)祖父の遺言

  • 労働者の母―ケーテ・コルヴィッツの生涯(4)この最後の者にも―ユリウス・ルップの説教

  • 労働者の母―ケーテ・コルヴィッツの生涯(3)最も小さな兄弟の一人にしたこと

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 救世軍清瀬病院が来年3月末で閉院、診療は今年11月下旬めどに終了

  • いのちの言葉聖書学校が卒業式、5人が新たな歩みへ

  • 韓国異端「新天地」の李萬熙総会長を逮捕、信者5万6千人を政党に強制入党させた疑い

  • Gゼロ時代の津波石碑(10)【久保有政氏に聞く】仏教とキリスト教のつながり(前半) 山崎純二

  • 「ヘブライズムが世界を救う」 ジーザス・ジューン・フェスティバル2026、東京・新宿で6月29日

  • 日ごとのパンを求めて―ジョージ・ミュラーの生涯(6)フランケの「孤児の家」

  • 旧統一協会の解散命令が確定、最高裁「必要でやむを得ない」 特別抗告を棄却

  • 日本キリスト教海外医療協力会、新会長に柳澤理子氏 椙山女学園大学教授

  • ワールドミッションレポート(6月24日):メキシコ カルテルと伝統の狭間で─暴力に耐えるキリストの弟子たち

  • 神学の限界と突破口(5)第1章 主な論争と解決─「聖霊論」の論争 三谷和司

  • 国旗損壊罪の創設に反対、日本キリスト教協議会が声明

  • 救世軍清瀬病院が来年3月末で閉院、診療は今年11月下旬めどに終了

  • Gゼロ時代の津波石碑(10)【久保有政氏に聞く】仏教とキリスト教のつながり(前半) 山崎純二

  • 旧統一協会の解散命令が確定、最高裁「必要でやむを得ない」 特別抗告を棄却

  • 聖書原語への招き─霊に燃え、主に仕えるために(11)パン種の譬えで示す神の国 白畑司

  • 神学の限界と突破口(5)第1章 主な論争と解決─「聖霊論」の論争 三谷和司

  • いのちの言葉聖書学校が卒業式、5人が新たな歩みへ

  • 両足に6本の指持って生まれた少年、キリスト教慈善団体の医療支援受け走れるように

  • トランプ氏のイラン戦争と移民政策、福音派で評価二分 否定的回答が半数超える

  • 「世界難民の日」 ワールド・ビジョンが8カ国で調査 子ども守る「自立」の重要性訴え

  • 国旗損壊罪の創設に反対、日本キリスト教協議会が声明

  • 米メガチャーチがビーチで洗礼式、過去最多の2552人が受洗

  • 着工140年以上のサグラダ・ファミリア、主塔「イエスの塔」完成 NHKが特番

  • 「聴く隣人のいるところ」 キリスト教高校の1年間が伝える「自由とは何か」問う大切さ

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(250)未信者とセカンドチャンスに潜む大きな課題 広田信也

  • 神学の限界と突破口(4)第1章 主な論争と解決─「贖罪論」の論争 三谷和司

  • 戦後のキリスト教ブームの中で生まれた口語訳聖書、今にも生きるキリシタン時代の聖書訳

  • 救世軍清瀬病院が来年3月末で閉院、診療は今年11月下旬めどに終了

  • 聖書全巻の翻訳、800言語で完成 飛躍的に加速する聖書翻訳

  • 「祈りなくしてリバイバルは起こらない」 日本リバイバル同盟が創立30周年

編集部のおすすめ

  • 「今、求められているのは、慰めと癒やし」 能登被災者支援でゴスペルコンサート

  • 「祈りなくしてリバイバルは起こらない」 日本リバイバル同盟が創立30周年

  • 芥川賞作家の鈴木結生氏らが登壇、青山学院大学で口語訳聖書刊行70周年記念講演会

  • 四国の教会が教団教派超え一致 「愛と希望の祭典・四国」閉幕、延べ3千人以上が参加

  • 「あなたの人生は、必ずよみがえる」 第63回首都圏イースターのつどい

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • Threads
  • RSS
Copyright © 2002-2026 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.