日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会は4日、岸田文雄首相が靖国神社の春季例大祭に合わせ、真榊(まかさき)と呼ばれる供物を奉納したことに抗議する文書(4月28日付)を公式サイトで発表した。
春季例大祭は4月21日から23日まで行われ、岸田首相は21日、「内閣総理大臣 岸田文雄」の名で真榊を奉納した。声明は、「憲法尊重擁護義務を負う立場にありながら、公然と『内閣総理大臣』の肩書を付して奉納を行ったことは、『公的』立場での明白な憲法違反行為」と指摘。後藤茂之厚生労働相も大臣の肩書で真榊を奉納しており、「同様に違憲」と断じた。
靖国神社については、「明治維新・戊辰戦争以来、天皇の側に立ち戦死した者を神道式で『神』として祀(まつ)る神社である。そこに参拝し関わることで侵略戦争を美化・正当化し、国民を積極的に侵略戦争に動員する役割を担ってきた」と指摘。戦後は一宗教法人となったものの、「侵略・加害行為への反省はなく、戦前・戦時下と変わらず戦没者を神として祀り、その死を殉国行為として無条件に美化する思想を推し進めている」とした。
その上で、首相の真榊奉納は、政教分離原則と憲法尊重擁護義務に違反する行為であると同時に、「アジア・太平洋戦争において国内外に甚大な被害をもたらしたことに対する歴史的認識を欠くものであり、国政の代表者として不適切」と抗議。今後は、靖国神社や伊勢神宮に参拝などを行わず、憲法の定める政教分離原則を厳格に遵守するよう強く要請した。