日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会は10日、菅義偉首相が靖国神社の春季例大祭に合わせ、真榊(まかさき)と呼ばれる供物を奉納したことに抗議する声明を発表した。
春季例大祭は4月21日と22日に行われ、菅首相は21日朝、「内閣総理大臣・菅義偉」の名前で真榊を奉納。田村憲久厚生労働相、井上信治科学技術担当相も真榊を奉納した。声明は、こうした首相と閣僚の行為は、私的・公的の区別なく国内外に公的な影響力を及ぼすと指摘。その上で、政府の代表らによる真榊奉納は、政府と靖国神社が特別な関係にあるかのように宣伝し、「(一宗教法人である)靖国神社の宗教活動を援助・助長・促進させる影響力を及ぼす」と批判した。
また、那覇市が管理する公園に建つ孔子廟(びょう)「久米至聖廟」について、市が公園の使用料を全額免除していたことを政教分離原則に違反するとした2月の最高裁判決に言及。同判決では、宗教性のある活動への公権力の関与の是非が問われ、明らかに宗教性を有する場合においては社会通念などを理由に公的関与を是認できず、公的関与を違憲とした。声明は同判決を踏まえ、「特定の宗教である靖国神社への関心を呼び起こすことになる今回の行動は、先の最高裁判決の憲法判断をも顧みないものであり、日本国憲法99条の憲法尊重擁護義務を負う者として『不適切な判断』という他はない」と断じた。
さらに、靖国神社について「明治維新・戊辰戦争以来、天皇の側に立って戦死した皇軍兵士を『英霊』として祀り顕彰するために建てられた神社であり、国民を積極的に戦争に動員し、侵略戦争へと駆り立てる役割を果たした」と指摘。「首相や閣僚らが、これらの歴史の反省を重く受け止めず、靖国神社への参拝や真榊奉納を繰り返すことは、日本政府が歴史に対して無反省であることを国内外に宣明することとなった」と強く非難した。
同委は靖国神社の春と秋の例大祭ごとに、首相と閣僚らの参拝や真榊奉納が政教分離原則に違反するとして抗議を続けてきた。4月16日にも菅首相に対し、春季例大祭で参拝や真榊奉納をしないよう求める声明を発表していた。