日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会は23日、平成から令和への天皇代替わりを総括する文書(1日付)を公開した。天皇代替わりに伴う一連の皇室行事について、「すべて天孫降臨神話に基づく宗教的儀式だった」と指摘。「このような天皇の祭祀(さいし)権を世襲する行為が、天皇の宗教的な権威を意義付けるものとして行われ、しかもそれらが国事行為、もしくは公的行為として行われた問題は極めて重大」と批判した。
文書は9ページにわたるもので、2016年に当時の明仁天皇(現・上皇)が生前退位を望むメッセージを発したことについて、一面では「第二の人間宣言」のように聞こえるとしつつも、「国権に関する機能を有しない」はずの天皇が、事実上国会に法改正を要求する「政治行為」だと指摘。メッセージの内容についても、法律上の根拠を持たない「天皇の公的な務め」について、自らその在り方を考え、決定し、行ってきたことをさらに継続し推進するとの意図に基づくとし、そうした点からも「重大な違憲行為と言わざるを得ない」とした。
天皇代替わりに伴う皇室行事の一つ「大嘗祭(だいじょうさい)」については、「『伝統』を超えた宗教的祭祀に他ならない」と強調。それにもかかわらず、昭和から平成への天皇代替わりと同様、公費で行われ、さらにメディアを通して広く宣伝されたことは、「皇室神道の教義の援助、助長、促進に他ならない」とし「違憲と判断されるべきもの」とした。その上で、こうした「天皇の神格化を根拠づける皇室神道的祭祀」が日本国憲法下で2度も行われ、これらが閣議決定で「憲法の趣旨に沿い」とされたことは、「もはや皇室祭祀に関わることであれば、宗教的意義を色濃く持ち、それを援助、助長、促進するとしても政教分離原則の適用範囲外であることを意味し、皇室祭祀が憲法を超えた治外法権となることを既成事実化するもの」と断じた。
また、「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」が内閣府を筆頭とする中央省庁の後援を受けて開催されたことについても、「日本は天皇を中心とする神の国であるとの天皇神格化イメージの宣伝に政府も協力したことになり、これもまた明白な違憲性を有する出来事であった」とした。その上で、「国費の投入によって行われた皇室神道行事は、明らかに神道的宗教儀式であったが、これを『憲法に十分に配慮した』という説明を安易に受け止めさせるよう世論操作が行われた。これらは国民が天皇を頭として統合されることを容認または許容させるものであり、実質的国民主権の形骸化につながる」と批判した。
一方、教会においても「天皇によって統合される精神性への批判力が弱まった」とし、それは「キリストを頭とするというキリスト教会のアイデンティティーが弱まったことの表れ」でもあるとした。かつて、戦前・戦中の教会が、天皇に膝をかがめ、神社を参拝し、礼拝においてさえ君が代の斉唱や、皇居の方角に向かって深く敬礼する宮城遥拝(きゅうじょうようはい)などを許容したことに触れ、「キリストを頭とする教会のアイデンティティーは、他の主を認めない排他性を信仰の告白として明確に持つものであり、戦後、二度目の代替わりを経た今日において、教会が教会であることの確立がいま一度問われている」と指摘した。