オランダ第2の都市であるロッテルダムの新市長に5日、モロッコ出身の移民でイスラム教徒であるアハメド・アブタレプ氏が就任した。オランダでイスラム系移民が市長に就任したのは初めて。共同通信が伝えた。
同通信によれば、アブタレプ氏は1961年、モロッコ北部生まれ。14歳のときに母親と兄弟らとともにオランダに移住。大学卒業後、ラジオ記者を経て政界入りし、首都アムステルダムの市議会議員、中央政府の内閣外相などを暦にした。
オランダでは人口の約30%がカトリックで、約20%がプロテスタントと約半数がキリスト教徒。イスラム教徒は約5%であるが、無宗教とする人は約40%いるとされている。
イスラム系移民の増加が年々増しており、同国においては「最大の社会問題」(同通信)として扱われている。元来、思想・信条を理由に迫害された人々を受け入れてきたという歴史などから、慣用的、リベラルな政策姿勢とされており、ワークシェアリングや安楽死の合法などといったものを先進的に取り入れている国である。
しかし、米国の9.11テロ以降は、イスラム系住民に対する反感が増しており、極右政治家などが移民排斥を主張。イスラム過激派が力を伸ばし、著名な映画監督であるテオ・ファン・ゴッホが殺害されるなどの事件も起きている。
アブタレプ氏は5日の就任演説で、「キリスト教の教会が減り、モスク(イスラム教礼拝所)が増える今の時代に、市民が恐怖と不安を抱くのは当然だ」(同通信)などと語り、オランダの伝統に配慮して運営していく方向を示した。