米南部や中西部を10日深夜から11日未明にかけて襲った一連の竜巻により、最も大きな被害が出たケンタッキー州では、教会も甚大な被害を受けた。同州の死者はすでに70人余りに及んでおり、アンディー・ベシア知事は最終的な死者が100人を超える可能性があるとしている。
米ニューヨーク・タイムズ紙(英語)によると、特に大きな被害を受けた同州メイフィールドでは、複数の教会が屋根を飛ばされ、メイフィールド第一合同メソジスト教会は、石造りの会堂であったものの、ほぼ全壊した。また、米テネシー・トリビュート紙(英語)によると、メイフィールドの聖ジェームズ・アフリカン・メソジスト監督(AME)教会も、赤レンガ造りの会堂が全壊。これまでに教会員1人の死亡が確認された。
米ロサンゼルス・タイムズ紙(英語)は、竜巻が襲った10日夜、メイフィールド第一バプテスト教会の地下室に家族と共に避難したウェス・ファウラー牧師(45)の話を伝えた。ファウラー牧師はその夜、妻と12歳、8歳、6歳の子どもたちと共に避難した。
「天井のタイルが上下に動き、部屋中にほこりが舞いました。私はほとんど、家族を地下室の壁に押し付け、その上に覆いかぶさっていました。正直なところ、(竜巻が直撃した)数分間は、生きていられるかどうか分かりませんでした。その瞬間、私の頭の中にあったのは、妻と子どもたちを守ることだけでした」
同教会には約350人の教会員がいるが、11日には1人の死亡が確認された。亡くなったのは高齢の男性で、竜巻が自宅を直撃したという。この他、竜巻で破壊された移動式住宅に住んでいた教会員の男性1人の行方が依然分かっていないという。
父親が牧会していた同教会を10年前に引き継いだファウラー牧師は同紙に、「メイフィールドのダウンタウンは、すべてが平らになったように見えます」と語った。1929年に建てられた同教会の会堂は改装中で、この半年間は近くの体育館で礼拝をささげていた。しかしこの竜巻により、改装中の会堂も全壊し、体育館の屋根も飛ばされてしまった。
ファウラー牧師は、メイフィールド第一合同メソジスト教会のジョイ・リード牧師や、メイフィールド市内の他の教会指導者らとも知り合いで、被害の少ない教会は、緊急避難所として会堂を開放するなどしているという。
チャーチ・オブ・クライスト(ディサイプルス派)系のクリスチャン・クロニクル紙(英語)によると、メイフィールドのノースサイド・チャーチ・オブ・クライストの地下室には10日夜、教会員や近所の住民ら約20人が避難した。会堂に被害は出なかったものの、停電と断水に見舞われているという。
同教会の南西約3キロには、多数の死者が出たことが伝えられているろうそく工場がある。教会員1人が工場で働いていたが、無事帰宅することができたという。ろうそくの需要が高まるクリスマスを前に、工場は24時間体制で稼働しており、竜巻が直撃した当時は約110人が働いていたという。これまでに救助された人は約40人で、依然として多くの従業員の安否が分かっていない。
チャーチ・オブ・クライストの緊急援助部門はすでに、被災者支援のために現地に向かっているという。
米CNN(日本語版)によると、米南部や中西部では10日深夜から11日未明にかけ、ケンタッキー州を含む少なくとも6州で計30以上の竜巻が報告された。このうち1つはアーカンソー州からケンタッキー州にかけて400キロ以上の範囲を襲い、確認されれば過去最長の記録になるという。
ケンタッキー州以外では、イリノイ州でアマゾン社の倉庫が被害に遭い、6人が死亡した。またこれまでに、テネシー州で4人、アーカンソー州で2人、ミズーリ州で2人が死亡している。
ジョー・バイデン米大統領は11日、「米国史上最大級の竜巻」との見方を示し、ケンタッキー州を対象とした連邦レベルの緊急事態宣言を承認。被災地への迅速な支援を表明した。