米国のバイデン政権が民間企業などを対象に従業員への新型コロナウイルスのワクチン接種義務化を発表したことを受け、南部バプテスト神学校とアズベリー神学校(共にケンタッキー州)は5日、義務化の見直しを求めて第6巡回区連邦控訴裁に提訴した。
バイデン政権は4日、100人以上を雇用する民間企業などを対象に、来年1月4日から従業員のワクチン接種または週1回の感染検査を義務付けると正式に発表した。対象となる従業員は約1億人で、米国の全労働者の3分の2に相当する。
両校の代理人を務める米保守派キリスト教法律団体「自由防衛同盟」(ADF)の発表(英語)によると、5日には義務化の見直しを求める申立書を提出。今後訴訟が進む過程で、義務化の執行停止も求めていく。
ADFの上級法務顧問であるライアン・バンガート氏は、「労働安全衛生局の緊急規則でワクチンを義務付けるというバイデン政権の決定は違法」だと指摘。「当団体のクライアントのような雇用主に、従業員の個人的な健康上の決定に立ち入らせ、将来の牧師を訓練するという重要な任務からリソースを逸らすことを強いるものだ」と述べている。
南部バプテスト神学校のアルバート・モーラー学長は、「政府が宗教教育機関に対し、強制力を持った国家権力の出先機関になるよう強要することは受け入れられない」と主張。「良心や宗教的信条の問題に対する政府の侵害行為に対し、われわれは拒否する以外に選択肢はない」と述べている。また、「この教育機関は、教会のために牧師を教育する目的で存在している」とし、「この神学校が、政府の代わりに、宗教上の正当な懸念を伴う教職員の個人的な健康上の決定を調査するようなことがあってはならない」と訴えている。
ワクチン接種の義務化をめぐっては、共和党の州知事らが相次いで提訴。米CNN日本語版によると、5日午後までに26州が義務化の差し止めなどを求めて提訴したという。