英与党・保守党のデビッド・エイメス下院議員(69)が15日、東部エセックス州の教会で男に刺され死亡する事件が発生した。ロンドン警視庁はテロと断定し、事件がイスラム過激主義に関連している可能性があるとするコメントを発表した。
エイメス氏はこの日、同州リー・オン・シーにあるベルフェアーズ・メソジスト教会を会場に、有権者との対話集会を開いていた。同教会はエイメス氏の選挙区内にあり、英国では下院議員が自身の選挙区でこうした有権者との対話集会を定期的に開催するのが通例となっているという。
英BBC(日本語版)によると、現地時間15日午後12時5分(日本時間16日午前0時5分)過ぎに通報があり、警官らが数分以内に現場に駆け付けたところ、複数カ所を刺されたエイメス氏を発見。警察と救急隊が現場で救命措置を行ったものの、エイメス氏はその場で死亡が確認された。
逮捕されたのは、ソマリア系英国人のアリ・ハービ・アリ容疑者(25)。ソーシャルメディアの投稿内容から一時、英政府のテロ防止事業の対象になったことがあったが、期間は短く、英情報局保安部(MI5)の正式な監視対象になったことはなかったという。
エイメス氏は1983年に初当選したベテラン議員で、保守派として知られ、人工妊娠中絶反対、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)支持の立場だった。この他、動物愛護活動も積極的に行っていたという。
欧州の福音派メディア「エバンジェリカル・フォーカス」(英語)によると、エイメス氏はカトリック信者で、現場近くの聖ペトロ・カトリック教会では15日夕、エイメス氏の死を悼むミサが行われた。同教会のジェフリー・ウールノー神父は、エイメス氏を「偉大な人物」だったと評し、信仰共同体は「最大の支援者を失った」と述べた。
英国国教会のカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーは、ツイッター(英語)に追悼文を投稿。「彼は敬虔なカトリック信者であり、その深い信仰が彼の正義感に影響を与えていました。私たちは、彼の人生によって豊かになりましたが、彼の早過ぎる死によって、悲しみに打ちひしがれています」などと述べ、その死を悼んだ。
英国では2016年にも、野党・労働党のジョー・コックス下院議員(当時41)が、同じく有権者との対話集会を開く予定だった図書館前で殺害される事件が起きている。