茨城県牛久市の東日本入国管理センター(牛久入管)に収容された複数の在日外国人が実名顔出しで不正義を訴えるドキュメンタリー映画「牛久」が、9日午後2時から山形国際ドキュメンタリー映画祭でオンライン上映される。本作が日本で上映されるのはこれが初めて。
映画を手掛けたのは、米国人ドキュメンタリー映画監督のトーマス・アッシュさん。日本在住歴18年のアッシュさんは、日本聖公会聖オルバン教会の信徒で牧師の息子でもある。クリスチャンの友人らと牛久入管の被収容者らを訪問するボランティアをする中で、人権が軽視されている現状を知り、本作の制作を思い立った。
被収容者は入管職員から受けた暴行やいじめ、離婚や堕胎の勧告、収容期間も待遇も裁量で決まってしまう現状、貧弱な医療体制などを訴えている。入管からの報復的措置を恐れて言い出せなかった証言を、被収容者の生の声を通して日本と世界に提示する。
映画に登場する被収容者の中にはクリスチャンもおり、アッシュさんと彼らの間で交わされる同じ信仰者同士としての会話も含まれている。アッシュさんは映画制作の中で強く感じたテーマの一つとして、彼らの中に見た強いキリスト教信仰を挙げている。
6月にドイツで開かれた日本映画祭「ニッポン・コネクション」のドキュメンタリー部門でニッポン・ドックス賞を受賞。今月5日にはオランダで開催された日本映画祭「カメラジャパン・フェスティバル」で観客賞も受賞した。この他、8月には韓国の「DMZ国際ドキュメンタリー映画祭」、9月にはニューヨークの日本映画祭「ジャパン・カッツ」、ベルギーのアジア映画祭「エレクトリック・ジャドーズ」でも上映され、今月24日には「ロンドン東アジア映画祭」でも上映が決まっている。
山形国際ドキュメンタリー映画祭は、アジア初の国際ドキュメンタリー映画祭として、山形市の市制100周年記念行事として1989年に始まった。2年に1度、毎回10月に開催され、今年はコロナ禍のためオンラインでの開催となった。
視聴は日本国内からのみ可能で、販売されるチケット数には上限がある。上映後には質疑応答の時間が30~40分ほど予定されており、アッシュさんに直接質問をすることもできる。チケット情報はこちらから。