アフガニスタンを旧支配勢力のイスラム主義組織「タリバン」が掌握し、民主政権が事実上崩壊したことを受け、キリスト教の国際組織が相次いで見解を発表した。世界の福音派6億人を代表する「世界福音同盟」(WEA)は、タリバンが宗教的少数派の迫害や女性弾圧、麻薬取引、人身取引などに携わってきた組織だとして「深い懸念」を表明。世界5億人を代表するエキュメニカル組織である「世界教会協議会」(WCC)は、アフガニスタンの人々が「再び恐怖と不安にさらされている」と危惧。共に加盟団体や加盟教会だけでなく、世界中のクリスチャン、宗教者にアフガニスタンのために祈るよう呼び掛けた。
WEAのトーマス・シルマッハー総主事は、公式サイトに掲載された文章(英語)で、「アフガニスタンの最近の動向と、タリバンの考える社会に適合しないすべての人々の悲惨な見通しを非常に懸念する」と表明。特に女性は、基本的な権利が大幅に制限されることになるだろうと危惧した。
一方でタリバン掌握前のアフガニスタンも、イスラム教からの改宗者が殺害されるなど、「それほど良い状況ではなかった」と指摘。「かつてはすべてがうまくいっていたかのように装ってはいけない」と警告した。米同時多発テロ事件を受け、米軍主導の軍事作戦により旧タリバン政権が崩壊した後に制定された現憲法も、イスラム教を国教と定め信教の自由がなかったとし、当時からすべての宗教的少数派が厳しい弾圧を受けてきたことを語った。
その上で、アフガニスタンでは欧米諸国が考えている以上にタリバンを支持する層が厚く、歴史的、文化的な複雑さがあることを強調。だがタリバンは、麻薬取引や人身取引など、あらゆる犯罪手段を用いて資金調達を行い、未成年の女性を性奴隷にすることも問題としない組織であり、今後アフガニスタンの状況はさらに悪化する可能性があるとし、次のように祈りを呼び掛けた。
「自由を切望しながらも、再び自国内で恐怖の中で暮らさなければならない多くのアフガニスタン人や、すべてを捨てて難民として他国に逃れた多くの人々のために、私たちの心は痛まずにはいられない。キリストにある兄弟姉妹のために、彼らが守られ、慰められるように一緒に祈ろう。聖書は、私たちがキリストにある一つの体であり、『一つの部分が苦しめば、すべての部分が共に苦し』(1コリント12:26a)むことを思い起こさせてくれる。今、非常に暗い局面に直面している国全体に新たな希望がもたらされるように祈ろう」
WCCは、イオアン・サウカ暫定総幹事の代理として、マリアンヌ・エジダーステン広報局長がコメント(英語)を発表。「武力紛争、強制退去、抑圧、汚職、悪しき統治のために、すでに何十年も苦しんできた人々が、ここ数日の劇的な動きの結果、再び恐怖と不安にさらされている」とし、WEA同様、特に女性の権利が制限されることに懸念を示した。
タリバンに対しては、「現在支配している地域のすべての人々の尊厳と権利を尊重しなければならない」と警告。「アフガニスタンやその他の地域のすべての関係当局に対し、暴力、抑圧、迫害を恐れて国外に逃れている人々を含め、すべてのアフガニスタン人の安全と安心を確保するよう訴える」とした。