バチカン(ローマ教皇庁)は1日、教会法典の一部を改定し、聖職者や教会内の要職にある信徒による未成年者らへの性的虐待に対する罰則を明確化したと発表した。改定された教会法典は12月8日に施行される。
現行の教会法典は、聖職者による未成年者への性的虐待があった場合も、「正当な処罰」を科すと定めるのみ。しかし改定後は、未成年者以外の大人も場合によっては虐待被害の対象者になり得ることを示した上で、虐待を行った聖職者に対しては「職権剥奪および正当な処罰」を科すと定めている。さらに、ポルノ画像の所持なども同様の処罰の対象として盛り込み、教会で役職に就く一般信徒も聖職者同様に処罰の対象としている。
今回の改定は、約20年にわたり世界各地で明らかになってきた聖職者による性的虐待に対し、カトリック教会が引き続き対処することを目的として行われた。ローマ教皇フランシスコは、ペンテコステ(聖霊降臨祭)の主日である5月23日に、改定に関する使徒憲章「パシテ・グレジェム・デイ(群れを牧しなさい)」に署名(6月1日公布)。教皇はこの中で、罰則について定めた教会法典第6集の改定について説明している。「パシテ・グレジェム・デイ」の英訳(非公式)によると、教皇は次のように述べている。
「新しい条文では、従来有効とされてきた規定にさまざまなタイプの変更を加え、新たに複数の処罰を科すこととしました。特に、文面に多数見られる新たな変更は、正義や、罪によって破壊された秩序の回復を望むコミュニティーの声が拡大していることに応えるものです」
教会法典における罰則規定の改定は、前任の名誉教皇ベネディクト16世が、現役時代の2007年に着手。ベネディクト16世は、改定に関する検討を教皇庁法文解釈評議会に指示していたという。
教皇フランシスコは、「より大きな悪を防ぎ、人間の弱さによって生じた傷を癒やすため」、迅速に使用される機敏な修正ツールとしての役割を果たせるよう、罰則規定の改定が必要だと説明。第6集の改定草案作成には、専門家や司牧者に加え、世界中から集まった多くの教会法学者や刑法の専門家らが協力したという。
現行の教会法典第6集(英語)は、「十戒の第6戒(姦淫〔かんいん〕してはならない)に反する他の外的罪を犯した醜聞事件にある聖職者は、停職処分に処される」(第1395条第1項)とした上で、「他の方法で十戒の第6戒に対する違反を犯した聖職者は、違反が力ずくや脅しによって、あるいは公然と、または16歳未満の未成年者に対して行った場合、正当な処罰をもって罰せられ、場合によっては聖職者の地位から解任されることも排除されない」(同第2項)としている。
これが改定後の教会法典第6集(英語)では、第1395条第2項における未成年者に関する言及を削った上で、代わりに第1398条でより詳細に罰則対象の内容を規定。聖職者が未成年者らと性行為を行ったり、露出を強要したり、ポルノ画像を取得・所持・展示・配布したりした場合、「職権剥奪および正当な処罰」に処すると定めている。
カトリック教会の教会法典は、2千年に及ぶ歴史の中で生み出されてきたさまざまな法規が20世紀初頭にまとめられたもの。初版が1917年に公布され、その後教皇ヨハネ・パウロ2世(当時)が83年に改訂版を公布。現在はこの改訂版が使用されている。原著はラテン語で、改訂版の日本語訳はラテン語との対訳で92年に『カトリック新教会法典』として出版されている。