ゴスペル音楽ドキュメンタリー映画「歌と羊と羊飼い」が、10月から東京のユーロスペースなどで劇場公開される。
ゴスペルは黒人教会にルーツを持ち、キリスト教と密接な関係にありながら、日本のゴスペル人口約20万人のうち90パーセント以上がノンクリスチャンだとされる。無宗教の人々がゴスペル音楽に親しむ現象は世界にもあまり類を見ない。なぜ、無宗教の日本人が宗教音楽であるゴスペルを歌うのか。「歌と羊と羊飼い」では、個々人の経験や活動を追いながらその一端を明らかにする。
出演は、スペイン出身のゴスペルシンガー・MARISAや、ゴスペルコンテストの頂点を目指す少女たち(眞塩藍咲、HIKARU)、本場米国の黒人教会で活動していたゴスペルシンガーで現在は牧師としても活動する Rev.Taisuke(臼井泰輔牧師)、ゴスペルに真摯(しんし)に向き合うミュージシャン(遠谷政史、大山小夜子)、ゴスペルに出会い変わっていく主婦(杉本民奈子)などさまざま。彼らの姿を追いながら、「歌」と「生きること」を描く。
映画では洗礼シーンも収録。また、昨年8月に急逝したゴスペルシンガー・松谷麗王の貴重なインタビュー映像や、彼が率いる「Pencil Bunch」(ペンシルバッチ)の姿も収録されている。松谷は日本のゴスペルレジェンドである故亀渕友香に師事し、次世代のゴスペルリーダーとして注目されていたが、心筋梗塞のため51歳の若さで亡くなり、その死は多くのゴスペルファンを悲しませた。
監督は、ベトナム人青年と日本人青年の結婚式を描いた「ぼくと、彼と、」(2019年)、横浜・長者町の伝説のライブハウスを取り上げた「FRIDAY」(20年)などのドキュメンタリー映画を手掛けてきた四海兄弟。
製作総指揮は、日米のゴスペルを追ったドキュメンタリー「GOSPEL」(監督:松永大司、14年)のプロデューサーを務めた飯塚冬酒。飯塚は、自身がゴスペルを歌うことなく、どのグループにも属さないながら、14年続く日本最大のゴスペルイベント「横濱ゴスペル祭」を作り上げた日本のゴスペル界では稀有な存在。映画は、8月29日に神奈川県民ホールで開催される今年の横濱ゴスペル祭でもプレミア上映される予定だ。
■ 映画「歌と羊と羊飼い」予告編