聖書に基づいた心の癒やしのプログラムに参加した受刑者は、幸福感が向上し、トラウマの悪影響が大幅に減少することが、米国聖書協会(ABS)と米ベイラー大学の共同研究で明らかになった。
共同研究(英語)によると、ABSの聖書に基づく更生トラウマ治癒プログラム「傷ついた心の癒やし」に参加した受刑者は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や復讐(ふくしゅう)心の低下が見られた一方、罪の赦(ゆる)しやレジリエンス(回復力)、人生に対する意味付けにおいては向上が認められた。
対象となった受刑者349人のうち86%には、最低1回のトラウマ経験があった。研究は、更生トラウマ治癒プログラムに参加した210人の受刑者と、参加しなかった139人の受刑者を比較し、前者に良い結果が見られたかどうかを確認するというもの。プログラムは1回当たり2時間のセッション5回で構成されており、プログラム修了後も参加者の状態を追跡して調査した。
「意外ではありませんでしたが、このプログラムの効果の大きさには驚かされました。被験者のトラウマ症状が軽減され、神や隣人、また聖書とつながっているという感覚が向上したわけですが、そればかりでなく、その効果が継続することが分かったからです」。クリスチャンの心理学者でABSの更生トラウマ治癒プログラムを担当するフィル・モンロー博士はクリスチャンポストにそう語り、「私たちは効果が持続することを立証したのです」と強調した。
プログラムを修了してから1~3カ月経過しても、受刑者らには罪の赦しや思いやり、回復力、家族や友人からの支援に対する認識といった分野で改善が見られた。モンロー氏は、このプログラムが実を結んだのはその信仰的側面によるとし、「その人が話したいと思っている信仰を引き出し、最適なメンタルヘルスの運用を行うことができれば、はるかに早く回復する傾向があることは他の研究でも知られています」と語った。
モンロー氏はまた、このプログラムはボランティア主導で行われるため、低コストで大きな影響を与えることができると話す。プログラムは、ABSから出版された書籍『トラウマの傷を癒やす:教会が貢献できる方法』(原題:Healing the Wounds of Trauma: How the Church Can Help)に基づくもので、更生施設のような場所が対象にされている。
ABSのロバート・L・ブリッグス会長兼最高責任者(CEO)は、米国がメンタルヘルスの危機に瀕していることを指摘した上で、この研究は「トラウマを抱えた人々への信仰的ケアの潜在的利点を示しています」と述べた。
「感情的、霊的、肉体的、精神的な癒やしにとって、聖書は欠くことのできない源泉であることが示されたのです」とブリッグス氏。「ABCのボランティア主導のトラウマ治癒ミニストリーは教会にとって重要なリソースであり、さまざまなコミュニティーにおけるトラウマの深い傷に対する教会の対応を支援するものです」と語った。
「心的外傷後ストレスを軽減し、罪の赦しや思いやりなどポジティブな美徳を向上させ、神と聖書への信頼を高め、低コストでネガティブな行動を減らすプログラムは多くありません。このプログラムは非常に効率的で、効果的で、全国的に拡大可能です」
この報告書の共著者で共同研究者の一人であるベイラー大学宗教研究所のバイロン・R・ジョンソン氏は、「深いトラウマを抱えた受刑者に、これほど短期間で、これほど良い結果をもたらす既存のプログラムは他にありません」と強調する。
米司法統計局によると、米国では受刑者の約20%が深刻な精神疾患を患っており、約30%から60%が薬物中毒に苦しんでいる。受刑者の半数以上が毎年治療を必要とするメンタルヘルス上の問題を抱えており、それが行動上の問題を引き起こす場合がある。
聖書に基づいた心の癒やしのプログラムは1990年代後半、少数言語の識字率向上を支援するキリスト教団体「国際SIL」の聖書翻訳者と東アフリカの戦争地帯の教会指導者によって開発された。ABSは2010年、トラウマの犠牲者に痛みを処理し、聖書を通して希望を得させるため、この更生トラウマ治癒プログラムの開発を開始した。
モンロー氏は、このプログラムが更生施設で社会復帰プログラムの良き解決策になる可能性があり、釈放後に再び刑務所に戻る受刑者を減らせる可能性があるとし、次のように語った。
「これは、堂々巡りの問題を解決するための有益な解決策のように思えます。私たちの更生施設では社会復帰に向けた訓練が行われておらず、トラウマも対処されていません。そのため、堂々巡りが繰り返されているのです」